10月31日、ニューハート・ワタナベ国際病院(本社:東京都杉並区、理事長:渡邊剛)の小圷徹医師らのチームは、大動脈弁狭窄症兼閉鎖不全症の70代男性の患者に対して、Perceval生体弁(Corcym)を用いたロボット支援下大動脈弁置換術を日本で初めて実施し、成功しました。
Perceval(パーシバル)生体弁とは、縫合糸で縫い合わせる必要がない無縫合(スーチャーレス)弁のことで、2018年12月より、厚生労働省の定めた施設基準を満たす医療機関において保険適応となりました。当院でもこれまで治療の一つに取り入れて参りましたが、手術支援ロボットを用いることで、従来と比較してさらに小さい傷口での手術が可能となりました(図1)。2024年6月にロボット弁置換術が保険適用(注1)となり、今後は同術式の適応がより拡大していくと考えられます。
(注1)認可された医療機関でのみ、保険適応となります。
大動脈弁狭窄症は、心臓の弁のひとつである大動脈弁が石灰化などの原因で狭小化し、きちんと開かなくなる病気です。発症しても無症状の期間が長く、内服薬などで病状をコントロールすることが困難です。自覚症状が出現すると予後が不良で、突然死の可能性も高いことから早期の手術加療を必要とします。
スーチャーレス生体弁を用いたロボット弁置換術の利点は、以下の3点です。
1. 傷口が小さい
手術支援ロボットを用いることで、胸骨正中切開などの従来の術式よりも傷口を小さくすることが可能となります。体への負担が軽減され、早期の回復が期待されます。
2.悪くなった弁を取り除く
悪くなった弁が残ってしまう「経カテーテル的大動脈弁置換術(TAVI)」と異なり、悪くなった弁を外科的に取り除いた後に人工弁を留置することができるため、より大きな弁口面積を確保することが可能となります。
3.手術時間の短縮
スーチャーレス人工弁は、スーチャー(suture)は”縫う”、レス(less)は“無い”の示す意味のとおり、縫合糸で縫い合わせる必要のない人工弁です。手術中の停止時間を大幅に短縮することが可能となり、身体への負担を最小限に抑えることができます。
ニューハート・ワタナベ国際病院は、2022年6月にロボット大動脈弁置換術を実施しており、同年10月にはロボット複合弁手術(大動脈弁・僧帽弁・三尖弁)にも成功しています。2024年6月にロボット弁置換術が保険適用となり、その認可を受けている数少ない医療機関のうちの1つです。心臓病に苦しむ患者さんをひとりでも多く救うため、常に最先端かつ最高峰の技術を追求し、“安全で身体に負担をかけない”を信条に日々の診療を行っています。
当院総長の渡邊剛医師は、「今年からロボット弁置換術が保険適用となったので、より多くの方に傷口が小さくて、身体への負担が少ない安全な治療を届けたい。」と話しています。主治医の小圷徹医師は、「多くの治療選択肢から、患者さんに最適の医療を提供したい」と話しています。
【心臓血管外科医 渡邊 剛】
ニューハート・ワタナベ国際病院総長。金沢大学医学部卒業後、ドイツ・ハノーファー医科大学心臓血管外科に留学し、32歳で日本人最年少心臓移植執刀医として活躍。帰国後、日本で初めて心拍動下冠動脈バイパス手術や心臓アウェイク手術に成功。手術支援ロボット「ダビンチ」を用いたキーホール心臓手術を日本で唯一実施しており、ロボット心臓手術の執刀数は、2019年から5年連続世界最多。
渡邊剛公式サイト:https://doctorblackjack.net
【心臓血管外科医 小圷 徹】
ニューハート・ワタナベ国際病院心臓血管外科。2016年金沢医科大学医学部卒業。心臓血管外科専門医。