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ウルフ―オオツカ法（低侵襲心房細動手術）
- 胸腔鏡下左心耳切除術 -とは
ウルフ―オオツカ法（低侵襲心房細動手術）とは、心房細動に対して、外科的アブレーションと左心耳の切除を同時に、低侵襲で行う手術方法です。ウルフ―オオツカ法、Wolf-Ohtsuka Procedure、胸腔鏡下外科的左心耳閉鎖術ともいわれております。
心房細動の患者さんの数は、高齢化にともなって増加しており、日本で100万人以上とも言われています。中には自覚症状が無い方や、健康診断の心電図などの短時間の検査では見つからない方もいます。心房細動は危険な不整脈で、頻脈や徐脈などにより心機能低下や心不全につながったり、致死的かつ重症化することの多い血栓性（心原性）脳梗塞が、何の前触れもなく突然起こる可能性があります。そのため、心房細動を発症した方には血栓予防のために抗凝固薬を内服する治療が行われています。
心房細動の患者さんには、次のような不安や悩みを抱え、QOL（クオリティー・オブ・ライフ=生活の質）が損なわれている方が、少なからずいらっしゃいます。
- 抗凝固薬を一生休まず服用する必要がある（出血のリスク等の副作用、高齢・認知症・腎機能障害などの医学的理由、あるいは社会的・経済的に困難な理由を含む）
- 心原性脳梗塞の危険に晒されている
- 動悸症状で行動が制限される
このような不安や悩みを解決するため、ウルフ―オオツカ法を2008年から開始しました。これまで2000名以上の患者さんに治療を提供しており、2022年4月には単独手技として世界で初めて保険収載されました。【ウルフ―オオツカ法】という手術名は、この手術を考案した米国テキサス州のランドール・ウルフ医師（Dr.Randall K. Wolf）と、大塚俊哉医師の名前に由来しております。
ウルフ―オオツカ法（WO法）の内容と手術時間について
ウルフ―オオツカ法は、次の2つを内視鏡で行います。
① 外科的アブレーション
肺静脈隔離等の外科的アブレーション（ウルフ―オオツカ法オリジナルの、心臓の外側から行う方法）を行い、不整脈を治療します。
※内科的アブレーション=足の付根の血管からカテーテルを入れ心臓の内側から行う方法
② 左心耳の切除
脳梗塞の原因となる血栓ができる場所は、95％以上の確率で左心耳だとわかってきました。その左心耳を切り取って閉鎖することにより、脳梗塞を予防し、抗凝固治療を不要にします。
左心耳の場所
心房細動歴が非常に長くてアブレーション効果が期待できないが、抗凝固薬の服用が困難な方には、②のみ適応となります。
手術時間は、①＋②で1時間～1時間半程度、②のみであれば約20分です。どちらも心臓を止めず、内視鏡を使って、小さな刺し創のみで手術を行います。
傷口
左心耳閉鎖法の違い
- ウルフ―オオツカ法と経皮的左心耳閉鎖術（ウォッチマン）-
左心耳閉鎖術（LAAC:Left Atrial Appendage Closure）には2つ方法があります。WATCHMAN（ウォッチマン）™という特殊な金属で作られた閉鎖栓を用いて左心耳を閉鎖する方法と、ウルフ―オオツカ法のように左心耳を切除し閉鎖する方法です。
左心耳閉鎖法の比較
| ウルフ―オオツカ法 | WATCHMAN 経皮的ウォッチマン移植法 |
|
|---|---|---|
| 人工心肺の使用 | しない | しない |
| 費用 | 保険適用 | 保険適用 |
| 適用範囲 | 全て （左心耳のサイズ・形状に制限なし） |
左心耳のサイズ・形状に制限あり |
| 術後の抗凝固薬の服用 | 不要 | 条件あり |
| 術後の抗血小板剤の服用 | 不要 | 必要 |
| 心臓内の異物 | なし | あり |
ウルフ―オオツカ法の適応
ウルフ―オオツカ法は、具体的には以下のような心房細動の方が適応になります。
- 抗凝固治療を受けているが、出血・貧血などの副作用や高齢・認知症・腎機能障害などの医学的理由（あるいは社会的・経済的理由）により、有効な治療を安定して継続するのが難しい方
- QOLが損なわれている/我慢を強いられている方
- 脳梗塞予防のための抗凝固治療を受けていて（あるいは近い将来必要で）、アブレーション治療の適応もある方
ただし、過去にWatchman（ウォッチマン－経皮的左心耳閉鎖治療）治療を受けられた方については、通常ウルフーオオツカ法は難しく、開胸による開心術が必要となります。
ウルフ―オオツカ法のメリット
(1) 低侵襲
内視鏡手術で傷口の小さい手術で、人工心肺を使わず、短い手術時間で手術が終わります。
(2) 左心耳のサイズ・形状に制限がない
どのようなサイズ・形状の左心耳でも適応しています。
(3) 抗凝固薬を離脱できる
左心耳の閉鎖部が修復される過程（内皮化）が早いため、迅速に抗凝固薬を離脱でき ます。
(4) 高い脳梗塞予防効果
出典元：Ohtsuka T, Nonaka T, Hisagi M, Kogure S. Thoracoscopic stapler-closure of left atrial appendage and epicardial clamp-isolation of pulmonary veins in a patient with non-valvular atrial fibrillation and short bowel: a case report. Eur Heart J Case Rep. 2019 Feb 6;3(1):ytz007. doi: 10.1093/ehjcr/ytz007. PMID: 31020252; PMCID: PMC6439397.
(5) 高い不整脈治療効果
術後2年間の洞調律維持率は、発作性＝95％、慢性＝70%です。
出典元：Ohtsuka T, Nonaka T, Hisagi M, Ninomiya M. En Bloc Left Pulmonary Vein and Appendage Isolation in Thoracoscopic Surgery for Atrial Fibrillation. Ann Thorac Surg. 2018 Nov;106(5):1340-1347. doi: 10.1016/j.athoracsur.2018.06.065. Epub 2018 Aug 14. PMID: 30118710.
ドクター紹介
ニューハートワタナベ国際病院の大塚医師の心臓内視鏡外科手術
WOLF-OHTSUKA(ウルフ-オオツカ)法について、詳しくはこちら
AppleWatch外来
ニューハート・ワタナベ国際病院の無料ネット外来®では、Apple Watch（アップルウォッチ）の心電図Appで記録されたデータに関する、不整脈の相談が可能です。ご希望の方は、心電図のPDFファイルをご用意のうえ、お問い合わせフォームに添付し、相談内容をお送りください。
※Apple Watchや心電図Appの操作方法についてのご相談はお受けできません。またAppleWatch以外のデバイスで測定したデータの受付も行っておりませんのでご了承ください。