発作性上室性頻拍とは
発作性上室性頻拍とは、突然脈が速くなり、しばらく続いた後に急に元のリズムに戻る不整脈です。
心臓の中に異常な電気回路が形成されたり、先天的に余分な電気の通り道(副伝導路)が存在することで、電気信号が心臓内をぐるぐる回り(リエントリー)、脈が非常に速くなることがあります。
ここでは、発作性上室性頻拍の原因・症状・治療方法についてご紹介いたします。
発作性上室性頻拍の原因
通常、心臓は「洞結節」という部位から一定のリズムで電気信号を発し、その信号が心房・心室へ順番に伝わることで拍動しています。
しかし発作性上室性頻拍では、心臓の中に正常とは異なる電気の通り道が生じ、電気信号がその中を再循環(リエントリー)するため、脈が突然速くなる状態が引き起こされます。
発作性上室性頻拍の症状
発作性上室性頻拍は、突然始まり、突然止まる動悸として感じることが多いです。胸の圧迫感や不快感を伴うこともあります。発作が起きていないときは心電図で異常がみられないため、健康診断などでは発見されにくいのが特徴です。
発作中には以下のような症状が現れることがあります:
- 動悸
- 胸の違和感
- めまい、ふらつき、立ちくらみ
- 血圧の低下
- 失神
- 長時間持続すると心不全症状(息切れ、倦怠感など)
発作性上室性頻拍の種類
発作性上室性頻拍は、発生の仕組みにより以下の3つに分類されます。
房室結節リエントリー性頻拍(AVNRT)
最も多くみられるタイプで、全体の約50%を占めます。
心房と心室の境界にある房室結節内に伝導速度の異なる2つの経路があり、電気信号がその間をぐるぐる回ることで頻拍が発生します。
房室リエントリー性頻拍(AVRT:WPW症候群など)
生まれつき存在する副伝導路(Kent束)を通って電気信号が心房と心室の間を回ることで発作が起こります。WPW(ウォルフ・パーキンソン・ホワイト)症候群として知られており、全体の約40%を占めます。
心房頻拍(Atrial Tachycardia)
心房の一部に異常な電気の発生源ができ、その部位が速いリズムで興奮し続けるタイプです。
他のタイプより少なく、全体の約10%程度です。
検査
診断のために、以下の検査を行います。
- 12誘導心電図
- ホルター心電図(24時間記録)
- イベントモニター(発作時の記録用)
- 心臓電気生理学的検査(EPS)
これらの検査で、発作のタイプや電気信号の回路を正確に特定します。
治療について
頻繁に動悸発作を生じたりする場合には薬物治療とカテーテルアブレーションを行ないます。
薬物療法
房室結節の伝導を抑えるβ遮断薬やカルシウム拮抗薬が用いられます。
これらは発作時の脈拍上昇を抑える効果があります。
また、抗不整脈薬によって発作そのものの予防を試みることもありますが、十分な効果が得られない場合もあります。
カテーテルアブレーション
カテーテルアブレーションは、異常な電気経路を高周波で焼灼し、根本的に治療する方法です。
カテーテルを静脈から心臓に挿入し、電気生理学的検査で異常回路(リエントリー回路)を特定し、その一部を焼灼して電気の流れを遮断します。
- 房室結節リエントリー性頻拍
- WPW症候群(Kent束による房室リエントリー)
これらのタイプでは再発防止率が90%以上と高く、薬の中止が可能になることもあります。
一方、心房頻拍では異常経路が複雑な場合もあり、3次元マッピングシステムを用いて電気回路を正確に描出し、適切な部位を焼灼します。
入院期間と術後経過
カテーテルアブレーションの治療時間はおよそ1〜2時間程度です。
治療終了後はカテーテルを抜去し、10〜20分程度の圧迫止血を行います(動脈を使用した場合は15〜30分程度)。
止血方法によって安静時間が異なります:
- 止血デバイスを使用した場合:約3時間後から歩行が可能です。
- 手圧止血の場合:静脈のみ使用した場合は約4時間、動脈も使用した場合は約6時間の安静が必要です。
翌日には自由に歩行できるようになり、通常は翌日または翌々日に退院できます。退院後は入浴や仕事、軽い運動は可能ですが、右足の付け根を深く曲げる姿勢(正座など)や激しい運動は1週間ほど控えてください。
予防と生活上の注意
- 処方された薬は医師の指示どおりに服用してください。
- 発作が長引く、または動悸が止まらない場合は、速やかに循環器科を受診してください。
- 睡眠不足、過度のストレス、カフェインやアルコールの摂りすぎは発作を誘発することがあるため、生活リズムを整えることが大切です。







