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心拍動下僧帽弁形成術(NeoChord®)

ニューハート・ワタナベ国際病院では出来るだけ体への負担が少ない手術を提供するため、手術用ロボット「ダビンチ(daVinci Surgical System)」によるキーホール(鍵穴)手術を筆頭に、世界最先端の治療に取り組んでまいりました。米国において開発されたNeoChord®というデバイスを使用した心拍動下僧帽弁形成術も、世界各国において良好な治療成績を収めていることを受け、僧帽弁閉鎖不全症に対する治療法の一つとして当院でも行っております。

心拍動下僧帽弁形成術(OPMVP)とは?

経心尖部(心臓の先端からのアプローチ)で、人工心肺を使わず、僧帽弁を人工腱索再建によって形成する術式です。人工腱索再建は従来の心停止下の僧帽弁形成術においても多用される方法のひとつですが、NeoChord®というデバイスを使用することにより心臓を動かしたまま人工腱索再建を行い僧帽弁の逆流を制御することが可能となります。超高齢者や再弁形成術を含む、治療が困難な症例に適した新しい手術方法です。英語ではTOP-MINI(Transapical Off-Pump Mitral valve repair with Neochord Implantation)とも呼ばれ、欧米では僧帽弁閉鎖不全症に対する治療法として注目されています。
カテーテルを用いて僧帽弁の前尖と後尖をつなぎ合わせる治療法のMitraClip(マイトラクリップ:経皮的僧帽弁クリップ術)とは異なります。マイトラクリップはカテーテルを用いて僧帽弁の前尖と後尖をつなぎ合わせる方法に対して、NeoChord®では、弁を自然な生理的な状態に戻すその心配もありませんし、万が一再手術をする場合にも再弁形成が可能です。

心拍動下僧帽弁形成術の手術適応疾患

心拍動下僧帽弁形成術(OPMVP)の適応疾患は、僧帽弁閉鎖不全症の方で僧帽弁形成術(MVP)が行えない方に適しています。

心拍動下僧帽弁形成術の手術方法と手術時間

左の胸に5~7cm程度の小切開を行います。心臓が動いた状態のまま心尖部より左室内にNeoChord®を挿入し、経食道心エコーで心臓内を観察しながら僧帽弁の逸脱した病変に先端を誘導します。
NeoChord®によりGore-Tex糸を弁尖に結えて人工腱索を作成します。NeoChord®を心尖部から抜き去り、経食道心エコーで僧帽弁の動きと逆流を観察しながら最も逆流が制御されるように人工腱索の長さを調節します。数本の人工腱索を設立し逆流が制御されたことを確認したら創部を閉じて手術終了です。手術時間は1~1.5時間程度です。

傷口のイメージ
傷口のイメージ

NeoChordを使った心拍動下僧帽弁形成術のイメージ
NeoChord®を使った心拍動下僧帽弁形成術のイメージ

心拍動下僧帽弁形成術の利点

・人工心肺を使わない

人工心肺を使わずに僧帽弁の形成を行えることが最大のメリットです。従来の手術では心房を開いて僧帽弁を形成する必要があったため、心臓を止めた上で人工心肺装置を使って全身に血液を送る必要があり、全身の臓器へ炎症を及ぼし負担をかけるリスクがありました。心拍動下僧帽弁形成術では人工心肺を使わずに手術を行う為、生理的な心拍動による血流で全身の臓器が灌流され負担を最小限に抑えることが出来ます。

・創が小さい

心尖部からアプローチする手術なので左の胸にに5~7cmの切開を行うだけで手術が可能です。

・超高齢者や再手術症例にも手術が可能
・手術時間が短い(1~1.5時間程度)
・脳梗塞のリスクが少ない
・腎不全、肺炎、感染症のリスクが低い
・抗凝固療法が不要
・早期退院、早期社会復帰が可能
・心臓が拍動している状態で治療効果の判定が可能

心拍動下でリアルタイムに僧帽弁の逆流が制御されることを確認できることも大きなメリットです。従来の心停止下の手術では弁の形成をした後、心臓が動いた状態になるまで弁の逆流が制御されたことの最終的な確認が出来ませんでした。心拍動下僧帽弁形成術では経食道心エコーで弁の状態を観察しながら人工腱索の長さを調整することが出来ます。

心拍動下僧帽弁形成術の治療成績

2011年から2019年までに全世界で1300人を超える方が、この心拍動下僧帽弁形成術(OPMVP)の治療を受けられて、統計的に術後3年の経過にて僧帽弁後尖病変においては98%の方が追加の治療を必要とすることなく過ごされております。侵襲が少ないため年齢は若年者から高齢者まで様々であり、報告されている中での最高齢は91歳です。

2022年5月に当院で、僧帽弁閉鎖不全症の方5人に対して、NeoChord®を使った心拍動下僧帽弁形成術(人工腱索再建)を実施し成功しました。5人のうち最高齢者は89歳で、80代以上の高齢者に施術、成功したのは国内で初めてです。また5人のうち1人は以前他院で手術をした方の再手術症例となり、こちらも国内で初めての手術成功事例となりました。日本では当院での8例を含め、10症例です。(2022年7月現在)

保険適応について

NeoChord®を用いた心拍動下僧帽弁形成術は、欧米において確立された治療法として認可されており、使用するデバイスであるNeoChord DS 1000もCE markを取得しておりますが、日本では現在のところ保険適応外となります。
当院でこの手術を受ける場合の自費診療の費用は300万円~800万円(税別)です。

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