心房中隔欠損症とは
心房中隔欠損症は、左心室と右心房の間(心房中隔)の壁に孔が開いている状態です。通常、心臓から肺に送られる血液量と、心臓から全身の動脈を通じて送られる血液量はほぼ等しいです。しかし、この疾患では左心房と右心房の間に欠損孔があるため、左心房から右心房に血液が流れ込み、右心室から肺への血液量が増加します。先天性心疾患による病気のひとつですが、新生児の時に初期段階で見逃され大人になるまで気づかずに過ごすこともあります。
2:1の割合で女性に多く発生することが知られています。
心房中隔欠損症の症状・原因
軽度の場合は自覚症状が殆どありません。子供のうちに見つかったとしても、成長とともに症状が強くなる場合も少なくありません。
穴が大きくなると息切れや脈拍の乱れがあり、肺高血圧症の原因にもなります。目立った症状がなくても、心不全、不整脈、感染性心内膜炎が起こりやすく、合併症のコントロールを含めた経過観察を要します。
生まれつき心臓やその周囲の大血管に異常があることに起因します。心房中隔欠損症は穴のあいている場所や穴の大きさによって、病気の程度、症状が異なり、治療の必要性や方法もそれに応じて変わってきます(図1)。
心房中隔欠損の血液の流れ
心房中隔欠損(ASD)は、左右の心房を隔てる壁(心房中隔)に穴がある先天性の心疾患です。通常、左心房には肺から戻った酸素を多く含む血液が、右心房には全身から戻る酸素の少ない血液が流れ込みます。しかし心房中隔欠損があると、血圧の高い左心房から右心房へ血液が流れるため、右心房や右心室、肺動脈に通常より多くの血液が送られます。この状態が長期間続くと、肺の血圧が上昇し(肺高血圧)、右心系への負担が増して心拡大や心不全を招く恐れがあります。欠損が大きい場合や症状が出ている場合には、治療が必要となることがあります。
検査
心エコー、胸部レントゲンと心電図などで判断します。問診で「息切れ」「動悸」「むくみ」などの症状がないか、また普段の生活の様子なども参考にします。
孔の大きさにより定期的な経過観察を続けます。
心房中隔欠損症の治療(手術)法
心房中隔欠損症の治療(手術)法として、当院ではロボット手術(ダビンチ手術)による直接閉鎖法・パッチ閉鎖法、小切開手術、カテーテル治療を行なっています。
キーホール手術(ロボット手術・ダビンチ手術)
手術支援ロボットを用いた心臓手術(ダビンチ手術)は、従来の開胸手術に比べて患者への身体的・精神的な負担が少なく、術後の回復も早いのが特徴です。従来のような胸骨を大きく切開する代わりに、1~2cmの小さな切開を数か所から手術用の鉗子を挿入して操作うため、傷跡が目立ちにくく、美容面でも利点があります。また、術中の出血量も大幅に抑えられ、通常の開胸手術の10分の1程度で済むことが多いです。さらに、キーホールと呼ばれる小さな創部により術後の痛みが軽く、回復が早いため入院期間が短縮され、術後3日ほどで退院できるケースもあります。
小切開手術
右心房を切開し、欠損孔が小さい場合は直接縫い合わせて閉じ、大きい場合や位置に応じては人工パッチを用いてふさぎます。欠損孔の大きさや場所に関係なく、確実な閉鎖が可能な方法です。
キーホール手術(ロボット手術・ダビンチ手術)
内科的治療・カテーテル法(アンプラッツァー治療)
この治療を安全に実施するためには、欠損孔の大きさや位置が適していることが必要条件となります。
一生涯異物(金属)が体内に残るため、金属アレルギーの人には使えず、また外れて飛んで行ったり、近くの大動脈壁に食い込み大動脈破裂するケースも報告されています。
心房中隔欠損症の入院期間
入院期間全体としてはおおよそ6日程度で、ロボット手術だと早ければ3日で退院することも可能です。術後しばらくは、体のむくみ対策として利尿剤を使用したり、血栓予防のためにワーファリンやアスピリンを数ヶ月服用することがあります。ただし、合併症がなければ薬は長期的には不要です。
一方で、肺高血圧症や不整脈、心不全などを伴う中高年の手術では、術後も症状が残る場合があり、内服治療が継続されることがあります。
心房中隔欠損症の術後
40歳頃までに治療をすれば、天寿を全うすることが可能です。術後は一時的に体のむくみを取るための利尿剤や、血栓を防ぐための抗凝固薬(ワーファリンやアスピリンなど)を数か月間使用することがあります。ただし、通常の心房中隔欠損で合併症がなければ、長期的な薬物療法は不要です。一方で、肺高血圧症や高齢発症による不整脈・心不全があった場合、病状の進行は抑えられても術後も症状が残ることがあり、内服治療を継続する必要があるケースもあります。
症状のセルフチェックシート
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