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心房細動とは?症状・原因・治療(手術)方法

心房細動を引き起こす原因、発症時の症状、診断・検査について解説いたします。治療方法について詳しく解説をしていますので、ぜひご覧ください。

心房細動とはどんな病気?

左右の心房は通常、洞結節と呼ばれる部位が発信する電気信号が心房壁に伝わることによって規則的に収縮、拡張し、下流にある左右の心室(全身、両肺に血液を送る部屋)に血液を送り出しています(図1)。心房やその周囲(肺静脈の付根が多い)に異常興奮する病変が出現し、洞結節の機能が抑制され、心房が1分間に350~600回、不規則かつ小刻みに痙攣する病気が心房細動です(図2)。心房細動はまれではない不整脈で、日本における患者数は約130万人、潜在的な患者数は200万人に上ると考えられています。高齢化により患者数は増加しています。女性よりも男性のほうが、約1.5倍発症しやすいという報告もあります。

心臓のしくみ① 図1-1

心臓のしくみ② 図1-2

心房細動の電気信号旋回の様子 図2

心房細動を引き起こす原因について

心房細動を引き起こす原因は、いくつかあります。
まずは加齢です。電気信号を伝える心筋が劣化し、心房の異常興奮が起きやすくなります。70代では約5%、80代では約10%の人が、心房細動を起こすと言われています。
心臓疾患が原因となる場合もあり、特発性、虚血性の心筋症、僧帽弁(左の心房と左の心室の間にある弁)疾患(=弁が狭くなったり逆流したりする)などです。
高血圧、糖尿病、呼吸器疾患、甲状腺疾患、睡眠時無呼吸症候群などの患者さんにも多くみられます。腎不全で透析を受けておられる患者さんにも多いことが知られています。
心臓手術を行なったあと20~30%の症例で、術後合併症として発作性心房細動が起こることもあります。
また、ストレス(精神的、肉体的)も発作性心房細動の引き金になるといわれています。
遺伝的な要素もあるといわれています。
糖尿病、肥満、脂質異常症などのメタボリックシンドロームも心房細動を引き起こしやすくなる要因とされています。
飲酒や喫煙も関係すると言われているため、日ごろの生活習慣や食事にも注意が必要です。

心房細動の症状について

心房細動が起こっても、半数近くの人には自覚症状がありません。
しかし、心拍が早すぎたり遅すぎたりすると、やがて心臓の機能が衰え、心臓の弁(僧帽弁や三尖弁)の逆流が悪化して、動悸や労作時息切れなどのいわゆる心不全症状が出現します。心拍数が遅くなり過度の徐脈になると意識消失発作が出ることもあります。このため、心房細動の患者さんはペースメーカー移植が必要となる患者さんも多いです。

心房細動の人は運動をしても大丈夫か?

心房細動だからといって、全く運動をしない生活をしていると、心肺機能が低下していきます。そのため、適度な運動を行うことが大事になってきます。しかし、心房細動の方は脈が早くなりやすいため、運動の内容によっては動悸や息切れ、胸の違和感を感じやすくなります。
どの程度の運動をするべきかは、医師へ相談をして指示を仰ぐようにすることをお勧めします。

最も恐いのは脳梗塞

心房細動が持続すると脳梗塞を発症する危険性が高まります。
脳梗塞は、脳の血管を血栓(血の塊)が塞いでしまう病気です。脳の機能が損なわれ、救命できた場合でも、多くの人に重い四肢の麻痺や言語障害などが残ります。
心房細動が脳梗塞を引き起こす理由は、心房細動が続くと心房の内部で血液が淀み、もっとも血流が停滞しやすい左心耳といわれる部位に血栓(血の塊)ができ、この血栓が血流に乗って脳の血管を塞ぐからです(これを心原性脳梗塞と言います。(図3))。心房細動が起こっていると、そうでない場合と比べ約5倍、心原性脳梗塞が起こりやすいと言われています。心房細動の患者さんはうつ病や認知症にもなりやすいですが、小さな血栓による脳障害だといわれています。

心源性脳梗塞のイメージ 図3

「心房細動の症状かな?」と思った方はオンライン診療をご利用下さい。

オンライン診療

症状が深刻化する前に医師にご相談下さい。

心房細動の診断・検査

問診

まず問診で高血圧、糖尿病、素因となる心臓疾患(僧帽弁の弁膜症、心筋症など)の有無を確認します。原因疾患がある場合はその治療が大切だからです。

12誘導心電図

心電図とは、心臓内に電気信号が流れる様子をグラフ化したものです。12誘導心電図とは、ベッドに横たわり胸や手足に10個の電極を付けて測定する心電図で、数分間の記録を取ります。

24時間ホルター心電図

12誘導心電図では検出されにくい発作性心房細動が疑われるようなら、24時間ホルター心電図を用います。これは携帯型の心電図で、24時間連続した記録が取れます。

イベントモニター

心電図の一種で、通常1週間程度装着します。その間に症状(イベント)が現われたら、スタートボタンを押します。そうすると、症状出現前後の心電図をとることができます。

心エコー検査

人間の耳には聞こえない超音波で心臓の内部を探る検査です。左心耳内の血栓の有無(造影CTも使われます)や、血液量、血液の逆流が起こっている場合はその程度などが測定できます。通常は胸の表面から測定する経胸壁心エコー検査を行ないますが、より詳細なデータを得たいときには、食道にプローペ(探触子)を飲み込んでもらって、そこから心臓を超音波で探る、経食道心エコー検査を行ないます。

頭部のMRI

磁気を利用して体の内部を探る画像検査です。脳梗塞の状態や、脳の血流を確認します。

血液検査

血液生化学検査で糖尿病などの内分泌疾患を含めたスクリーニングや凝固機能を調べます。甲状腺疾患が心房細動の原因となっていることがあり、その場合はその甲状腺疾患の精査や治療が必要になります。

心房細動の治療について

脈の治療

①リズムコントロール

心房細動を停止させ正常な脈に復帰させます。
抗不整脈薬による保存的方法、電気ショック、そして外科的手術やカテーテルによる観血的方法があります。

②レートコントロール

心房細動のままで、心拍数が速くなりすぎないようにします。
心室に送られる信号が正常なものに近づけば、心室への負担が軽くなり、心不全の合併が防げます。ベータ遮断薬などの抗不整脈薬が用いられます。

脳梗塞予防

心原性脳梗塞を予防するためのもので、左心耳の中に血栓ができるのを防ぎます。
保存的治療として以前はワーファリンという抗凝固薬が使用されていましたが、月1回程度の定期的な血液検査でその人に合う投薬量を調整しなければなりません。納豆や緑黄色野菜などのビタミンKを多く含む食べ物の影響も受けやすく食材の注意が必要です。現在では、そうした問題点を改良した抗凝固薬が使われています。非ビタミンK拮抗経口抗凝固薬がそれで、血液検査や食事制限が不要といったメリットがある一方で、薬代が高いというデメリットもあります。
最近では血栓ができる左心耳を外科的あるいはカテーテルによって閉鎖する方法(左心耳マネジメントといいます)が開発されて抗凝固薬の継続的使用が困難な患者さんに使用されています。

薬剤使用の問題点
抗不整脈薬を使用して長年慢性化した心房細動を完治させるのは困難で、薬剤が効かない難治性の発作性心房細動も多いです。抗凝固薬には重大な出血性副作用(脳出血や消化管出血)が報告されています。一生服薬し続けなければいけないというのも問題です。

心房細動の非薬物療法について

電気ショック(電気的除細動)療法

頻脈発作が続いたときには有用な方法ですが、心房細動の根本的な治療法ではありません。

ペースメーカー療法

意識消失発作のリスクが高い心房細動(高度の徐脈性慢性心房細動や突然数秒以上脈が途切れる発作性心房細動)に有用で、ペースメーカーを心臓に植え込み心拍を補う治療法です。

カテーテルアブレーション

カテーテルアブレーションとは、数本のカテーテル(細い管)を脚の付け根から血管を通して心臓の内部に挿入し、そのカテーテルを使って異常な電気信号を発している箇所を見つけ出し、病変を焼灼したり冷凍凝固したりする内科的治療法です(図4)。「アブレーション」とは「焼灼」という意味です。体に直接メスを入れるわけではないので患者さんの体の負担が軽く、主として発作性心房細動(成功率は70~80%程度)の治療に使用されますが、心房細動が固定した慢性心房細動では成功率が下ります。何度か手技を繰り返す必要があるケースも多く、脳梗塞の原因となる血栓が形成されやすい左心耳に対する治療は行われないので抗凝固治療の離脱は困難です。

高周波カテーテルアブレーションの模式図 図4

外科手術

メイズ(Maze)手術

1980年代にコックス氏らによって開発された心房細動に対する根治手術です。
メイズ手術とは、左右の心房の心筋に対し、4センチ幅以下の短冊となるような迷路(メイズ)を作製して電気的制御を行なう手術です。高周波焼灼、冷凍凝固などが使用されます(図5、6)。この手術では、脈の治療と同時に心原性脳梗塞の予防を目的とした左心耳切除を行います(図7)。左心耳を切除しておけば、仮に手術後、心房細動が再発しても、抗凝固剤を服用する必要がないというカテーテル治療にはない利点があります。主に僧帽弁手術や他の人工心肺を使用した開心術の併施術式として行われています。

フルメイズ手術 図5

フルメイズ手術における冷凍凝固 図6

脈の治療と同時に心原性脳梗塞の予防を目的とした左心耳切除 図7

ウルフ―オオツカ低侵襲心房細動手術

手術手技やテクノロジーの進歩により、人工心肺を使用せず、完全内視鏡下に、心臓の外側から、メイズ手術の主要部である「左右の肺静脈および上大静脈の隔離と左心房後壁のアブレーションおよび左心耳切除」が可能となりました(図8、9、10)。短時間(1時間半程度)で終了し、1回の手術でリズムコントロールの成績(正常な脈の維持率)は発作性でも慢性型でもカテーテル治療より優れ、左心耳をきれいに切り取ってしまうことにより出血性副作用のある抗凝固治療からの速やかな離脱が可能であるのが特色です(図11)。ウルフ―オオツカ法の左心耳マネジメントによる脳梗塞予防効果中期成績はワーファリンによる保存的治療やカテーテルによるデバイス(ウォッチマン)移植術よりはるかによいという結果も報告されています。孤立性心房細動症例(心房細動のみの患者さん)の有力な治療選択肢として国内外で評価されています。

ウルフ―オオツカ低侵襲心房細動手術① 図8

ウルフ―オオツカ低侵襲心房細動手術② 図9

ウルフ―オオツカ低侵襲心房細動手術③ 図10

左心耳をきれいに切り取ったイメージ 図11

まとめ

心房細動は多くの原因で起こります。無症状であることも多いですが、重症の血栓性脳梗塞や心不全を引き起こす危険性があります。脳梗塞予防のために使用される抗凝固薬は血栓形成を抑制してくれますが臓器出血などの重大な出血性副作用がある諸刃の剣と言えます。心房細動が起こっていることが確認されたら、脳梗塞や心不全の予防法などを医師に相談してみてください。抗凝固治療が困難な患者さんにも左心耳マネジメントという新たな方法があります。ニューハート・ワタナベ国際病院は最新のウルフ―オオツカ低侵襲心房細動手術のみならず心房細動治療に対して多くの選択肢を提供できます。

その他の心臓病については「心臓病の種類一覧10個と各病気の症状・治療について」でご紹介しております。参考にご覧ください。

ニューハート・ワタナベ国際病院の心臓血管外科一覧はこちらをご覧ください。

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