心房粗動とは
心房粗動とは、心臓の右心房で電気信号が一定の経路を高速で旋回することによって起こる不整脈です。
多くの場合、右心房の中にある「三尖弁輪(右心房と右心室の境界)」のまわりを電気信号が回り続けることで発生します(これを典型的心房粗動といいます)。
まれに、別の経路を回る非典型心房粗動がみられることもあります。
心房粗動の症状
主な症状は、突然始まる動悸です。
発作が始まった直後に血圧が下がり、めまいやふらつきを感じることがあります。
動悸が持続する場合は、息切れや疲労感、胸の圧迫感が出ることもあります。
高齢者や心臓病のある方では、心房粗動がきっかけで心不全や失神に至ることもあります。
心房粗動の原因
心房粗動は、心房内に瘢痕(傷跡)や変性部位が生じ、その周囲を電気信号が回り続けることで起こります。
主な原因として以下のものがあります。
-
抗不整脈薬の影響
心房細動の治療に用いられる抗不整脈薬(サンリズム、プロノンなど)によって、約15%の患者で心房細動が心房粗動に変化することがあります。
心房粗動は自然停止しにくく、長く続く傾向があります。 -
基礎疾患による影響
甲状腺機能亢進症、肥満、睡眠時無呼吸症候群、心膜炎、肺疾患、肺血栓塞栓症などが心房に負担をかけ、電気信号の通り道を変化させることで発症することがあります。 -
心臓手術後
心臓外科手術後に心房内に瘢痕が形成され、その周囲を異常な電気信号が回ることで心房粗動が生じることがあります。術後の早期や慢性期のどちらでも発生し得ます。 -
心房細動アブレーション後
心房細動に対するカテーテルアブレーションの治療後、作成された焼灼線(瘢痕)を囲むように電気信号が旋回し、心房粗動を生じることがあります。 -
明確な原因が見つからない場合
一部の患者では明確な誘因が特定できないこともありますが、詳細な電気生理学的検査を行うと、心房内に変性部位や小さな瘢痕が確認されることが多くあります。
合併症
心房粗動によって起こりやすい合併症には、血栓塞栓症と心不全があります。
-
血栓塞栓症
心房が規則的に速く動きすぎると、心房の収縮が弱まり、血液が心房内に滞りやすくなります。
その結果、血栓(血のかたまり)ができることがあり、それが血流に乗って脳などに飛ぶと脳梗塞(脳卒中)を起こすことがあります。
このため、心房粗動でも心房細動と同様に、抗凝固薬による脳梗塞予防が重要です。 -
心不全・血圧低下
心拍が非常に速くなると、心室に十分な血液が入らず、全身への血流が低下します。
これにより、息切れ、倦怠感、血圧低下、むくみなどが現れることがあります。
検査
診断には、以下の検査を行います。
- 12誘導心電図
- ホルター心電図(24時間記録)
- イベントモニター
- 心臓電気生理学的検査(EPS)
これらの検査により、心房粗動の型や発生部位を正確に特定します。
心房粗動の治療(手術)法
心房粗動の治療は、症状の改善と再発予防、そして血栓塞栓症の予防を目的に行います。
主な治療方法は以下の3つです。
1. 薬物療法
-
抗凝固療法
脳梗塞の予防として、ワルファリンやDOAC(イグザレルト、エリキュース、リクシアナなど)を服用します。 -
レートコントロール
心拍数を抑える薬(β遮断薬など)で、脈拍を安定させます。 -
リズムコントロール
抗不整脈薬を用いて正常なリズムに戻す治療です。
2. 電気ショック治療(電気的除細動)
一時的に電気刺激を加えて、心房粗動を停止させる方法です。
成功率は高いですが、心房内の異常回路そのものを取り除く治療ではないため、再発することがあります。
3. カテーテルアブレーション
根本的な治療法として確立されています。
心房内で旋回している異常な電気信号の経路を特定し、その一部を焼灼して**ブロックライン(遮断線)を作成し、電気の流れを断ちます。
全身麻酔下で、頸部や大腿部の静脈からカテーテルを挿入し、3次元マッピングシステム(CARTOなど)を用いて心房内の電気回路を可視化します。
成功率は約90〜95%**と高く、合併症はまれ(血栓塞栓症:約0.1%、心タンポナーデ:約0.2%)です。
入院期間・術後
カテーテルアブレーションによる治療では、通常3泊4日程度の入院が必要です。
治療前日に入院し、翌々日に退院します。
治療後は数時間安静が必要ですが、翌朝には歩行が可能になります。
出血や不整脈の再発、その他の合併症の有無を確認したうえで退院します。
退院後は、定期的に外来で心電図と薬の調整を行います。
予防と生活上の注意
- 処方された薬は指示どおりに服用してください。
- 動悸や息切れなどの症状が続く場合は、早めに循環器専門医を受診してください。
- 十分な睡眠、ストレスの軽減、節度ある飲酒など、生活習慣を整えることも再発予防につながります。
予防・食事
かつてはリウマチ性心疾患が多く、最近は基礎疾患を持たないstand alone型また冠動脈疾患で起こります。
特に最近では加齢だけで心房細動や心房粗動の起こる可能性が高くなります。
動機が停止しない場合は最寄りの循環器科を受診してください。







