心臓弁の機能を取り戻す高い成功率の心臓弁膜症の手術
- 手術後の退院までの日数:7~10日間
- 保険適応
大動脈弁置換術は、ごく普通の心臓手術と思われがちですが、全国平均の手術死亡率は2~3%と高く、決して安全な手術とは言えません。
全国の平均の手術成功率は97%です。これは高いように思われますか?30人に1人は死亡するということを考えてみてください。
我々は200人に1人以下の確率で手術を行います。実に6~7倍の安全率で手術が終わるのです。 手術の安全性を高め、確実な手術を完遂するためにさまざまな工夫をしてきました。
- 大動脈弁置換の場合、人工弁の縫合技術を見直し大動脈遮断時間(心停止時間)を著しく短縮させました。通常の手術では、全国平均で心停止時間は97分(日本胸部外科より)ですが、我々は40~50分で手術を完遂します。心停止時間が長ければ長い程心臓の筋肉に与えるにダメージが大きいため、術後の合併症も増えてきます。
- 大動脈弁輪が狭い患者さんには、人工弁が入らない場合があります。その時には自己の心膜を用いた、大動脈弁形成術を行っております。この方法については、別のところで述べますが、大動脈弁形成術は大動脈弁輪が狭いだけでなく出産を希望する若い女性などにもとても有効で良い方法です。
- 心臓を停止する特別な液である心停止液の組織・投与法を改善し、安全に心停止下の手術を行うことが出来るようになりました。これにより体に与える負担が極めて軽くすむことが出来ます。
ニューハート・ワタナベ国際病院では、傷が小さく
体や心臓への負担が軽くすむ小切開手術を標準で行います。
大動脈弁置換においても、骨も神経も血管も切らず、肋骨の間を切らない小切開手術は可能です。大動脈弁の場合は傷口がやや上にずれることがあります。
小切開手術のメリット
- 小さい出血量が少ない、痛みが少ない、傷が小さい
- 早い手術が早く終わる
- 戻れる手術後早くもとの生活に戻れる
- 残らない傷が胸の真ん中に残らない
小切開手術(MICS)の映像
MICS(小切開)による大動脈弁置換術
人工弁の特徴
「弁置換術」とはもともとの心臓弁を切除し新たに人工弁を取り付ける手術です。
人工弁には「機械弁」と「生体弁」の2種類に大きく分けられ、それぞれに特徴があります。
血行動態(弁としての働き)はどちらも大きな差異はありませんが、耐久性(長持ちするかどうか)、抗血栓性(血の固まりがつきにくいかどうか)に違いがあります。
疾患名 | 機械弁 | 生体弁 |
---|---|---|
素材と構造 |
チタンやバイロライトカーボンなどの金属が素材で半月状の弁葉が開閉する構造 |
ウシの心膜やブタの心臓弁などの生体組織からできている |
耐久性 |
半永久的 |
10~20年 |
抗血栓性 |
血栓の可能性があるため抗凝固剤の内服が必要 |
血栓の心配はほとんどない |
抗凝固剤内服 |
生涯必要 |
不整脈がなければ術後3カ月間のみ |
短所 |
抗凝固剤(ワーファリン)内服に伴う出血にまつわる合併症、胎児への影響 |
10~15年後に再手術(再弁置換術)が必要となる可能性がある |