房室ブロックとは
房室ブロックとは、心臓の電気信号(刺激伝導)が心房から心室へうまく伝わらない、または伝わるのが遅くなる状態を指します。
心臓の拍動は、洞結節という部位から発生した電気信号が刺激伝導系を通って心房・心室に伝わることで、規則正しく行われています。この伝導が途切れたり遅れたりすると、心拍が遅くなったり(徐脈)、一時的に止まったりして、めまいや失神を引き起こすことがあります。
房室ブロックの症状
房室ブロックの症状は、障害の程度によって異なります。
一般的に、**I度、II度、III度(完全房室ブロック)**の3段階に分類されます。
I度房室ブロック
電気信号の伝導が遅れるだけで、ほとんどが無症状です。健康診断で偶然見つかることもあります。
II度房室ブロック
電気信号が時々途切れます。軽いめまいやふらつきを感じることがあります。特にMobitz II型では、III度へ進行することがあります。
III度(完全)房室ブロック
心房からの電気信号がまったく心室に伝わらない状態で、心室は自発的に遅いリズム(30〜50回/分)で拍動します。強いめまい、失神、息切れ、疲労感などが起こり、重症では命に関わる場合もあります。
房室ブロックの主な原因
房室ブロックは、さまざまな原因で発生します。
- 加齢による刺激伝導系の変性(最も一般的)
- 心筋梗塞や心筋症(アミロイドーシス、サルコイドーシスなど)
- 薬剤の影響(β遮断薬、カルシウム拮抗薬、ジゴキシンなど)
- 電解質異常(特に高カリウム血症)
- 甲状腺機能低下症
- ウイルス性心筋炎、リウマチ性心疾患
- 強い迷走神経刺激(睡眠中や若年アスリートに多い)
検査
診断には以下の検査を行います。
- 12誘導心電図
- ホルター心電図(24時間記録)
- イベントモニター
- 心臓電気生理学的検査(EPS)
これらにより、房室ブロックの種類や重症度を正確に評価します。
房室ブロックの治療法と入院期間
ペースメーカー治療
II度(Mobitz II型)やIII度房室ブロックでは、ペースメーカー植込み術が必要になる場合があります。
ペースメーカーは脈拍を感知し、必要に応じて電気刺激を送ることで、心拍を安定させる小型装置です。
手術は局所麻酔で行われ、時間は約60〜90分。身体への負担は軽く、装置は皮下に埋め込まれるため目立ちません。
装置の電池寿命はおよそ7〜8年で、定期的な外来フォローにより交換時期を判断します。
無症状のI度房室ブロックは原則としてペースメーカーの対象にはなりません。通常の入院期間は4泊5日程度です。
薬物療法
房室ブロックそのものを改善する薬は現時点ではありません。
心拍数を増やす薬も効果は限定的で、根本治療にはペースメーカーが有効です。
術後の経過
術後1〜2か月間は、植込み側の腕を肩より上に上げたり、重い荷物を持つことは避けてください。
ゴルフや水泳などの運動は3か月ほど控える必要があります。
術後は定期的にペースメーカーの作動を確認し、年2〜3回の検査を継続します。
ペースメーカーは精密機器のため、強い磁気や電波には注意が必要です。
携帯電話は植込み部と反対の手で扱い、15cm以上離して使用すれば安全です。
予防と生活上の注意
房室ブロックは加齢や心疾患が原因のことが多く、明確な予防法はありません。
ただし、定期的な心電図検査や、めまい・失神などの症状が現れた際の早期受診が大切です。
また、十分な睡眠、ストレスの軽減、過度な運動を避けるなど、生活習慣を整えることも再発防止に役立ちます。
予防・食事
過度な運動を控え、睡眠不足やストレスを避けるように心がけて下さい。