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心不全とは?原因・症状・治療・手術・予防方法

心不全[シンフゼン]

心不全とは、心臓のポンプ機能がちゃんと働かなくなった状態です。充分な量の血液を全身に送れなくなり、また、肺や肝臓などに血液が滞って、呼吸困難やむくみ、動悸、疲労感など、さまざまな症状が引き起こされます。

心不全は個別の疾患名ではなく、さまざまな原因疾患が引き起こす心臓機能弱化の症候群のことを言います。

心不全は、心臓病で死亡する際の最も多い原因となっています。超高齢化社会を迎える日本では、今後、心不全の患者さんが増加すると予想されます。

ここでは、心不全が起こる原因、現われる症状、行なわれる治療や予防法などについて説明します。

心不全のメカニズムとは?わかりやすく簡単に説明

心不全は、以下のようなメカニズムで起こります。

心臓には4つの部屋があります。そのうちの左心室[さしんしつ](左室)と左心房[さしんぼう](左房)は血液を全身に送り出す役割、右心室[うしんしつ](右室)と右心房[うしんぼう](右房)は全身から戻ってくる血液を受け取る役割です。左室と左房をひとくくりにして左心系、右室と右房を右心系と言います。

肺で酸素を取り込んだ血液(動脈血)は、まず左房、次いで左室に送られ、心臓の収縮期に左室から全身に送り出されます。酸素を消費し二酸化炭素が豊富になった、全身から戻ってくる血液(静脈血)は、まず右房、次いで右室に送られ、心臓の収縮期に肺に送り出されます。肺では、血液中の二酸化炭素が酸素と置き換えられます(図1)

心臓のしくみ
図1

左心系から全身を経て右心系に戻る血流を体循環、右心系から肺を経て左心系に戻る血流を肺循環と言います。

健康な人では、この循環がきちんと行なわれているのですが、なんらかの原因で収縮期に充分な血液が送り出せなくなると、全身の臓器で血液が不足し、疲労感を覚えたり、動悸が起こったり、手足が冷えたりします。また、血流が滞り、肺や肝臓などに血液が溜まって(肺うっ血や肝腫大)、息苦しくなったり、むくみが出たり、お腹が張ったり、痛んだりします。この状態が心不全です。

心不全の種類

心不全の種類分けには、2つの観点があります。ひとつは、問題を起こしているのは左心系か右心系かという観点、もうひとつは、急な発症なのか慢性なのかという観点です。

①左[さ]心不全と右[う]心不全

左心不全は、主に左心系に問題があって生ずる心不全で、右心不全は、主に右心系に問題があって生ずる心不全です。

左心不全は、なんらかの原因で左室から大動脈に充分な血液(動脈血)が送り出せなくなることで生じます。こうなると、全身の臓器に充分な血液が行き渡らなくなるだけではなく、左室より上流の左房や肺静脈(肺と左房の間の静脈。「静脈」と呼ばれてはいますが、流れているのは酸素の豊富な動脈血です)や肺でも血流が滞り、肺がうっ血(鬱血)したり(肺うっ血)、肺に水が溜まったり(肺水腫)します。この肺循環系のうっ血が、左心不全の特徴です。

一方、右心不全は、なんらかの原因で右室から肺に血液(静脈血)を送り出す力が弱まることで生じます。こうなると、肺に送れなかった血液が右心系に滞り、全身から心臓に戻る静脈血も滞るようになります。その結果、肝臓が腫れたり(肝腫大)、腹水が溜まったり、頸静脈が怒張したり、手足がむくんだりします。この体循環系のうっ血が、右心不全の特徴です(図2)

左心不全と右心不全
図2

左心不全の状態が続いていると、右心不全も引き起こされます。左心不全によって肺への負荷が増大すると、肺動脈(右室と肺の間の動脈。「動脈」と呼ばれていますが、流れているのは酸素の乏しい静脈血です)の圧も上昇し(この状態を肺高血圧症と言います)、右心系にかかる圧を増大させます。そのため、右心不全が引き起こされるのです。
左心不全に右心不全が合併した心不全を、両心不全と言います。

②急性心不全と慢性心不全

心不全には、急に発症する急性心不全と、徐々に発症する慢性心不全があり、急性か慢性かによって治療法が違ってきます。

急性心不全は、急性心筋梗塞などが原因で発症するケースが多く、激しい呼吸困難など、いろいろな症状が急激に現われます。心拍出量(心臓から送り出される血液量)が大きく低下して血圧が維持できなくなり、ショックに至ることもあります。

慢性心不全は徐々に進行するのですが、それに対抗して代償機構(心拍出量を維持しようとするさまざまな作用)が働くため、しばらくは症状が出ません。このため、一般に症状が現われたときには、かなり悪化した状態になっています。

慢性心不全が重症化すると、経過中に何度も急性増悪(急性心不全の発症)を起こし、その都度、入退院を繰り返すようになります。

うっ血を主症状とする慢性心不全を、うっ血性心不全とも呼びます。

心不全の原因疾患

心不全の原因疾患には、以下のようなものがあります。

虚血性心疾患
虚血性とは、血液が不足した状態のことです。
心筋(心臓の筋肉)が働くのは、心臓の表面を走る冠[かん]動脈から酸素や栄養分が送られているからですが、この冠動脈が、糖尿病や高血圧、脂質異常症、肥満などによって動脈硬化を起こし、狭まったり(狭心症)、詰まったり(心筋梗塞)すると、心筋に血液が届かなくなります。その結果、心筋が弱ったり壊死[えし]したりして、心臓のポンプ機能が低下します。急性心筋梗塞を起こすと、急性心不全が引き起こされます。

高血圧性心疾患
高血圧症は心臓への負担を強めます。高血圧症の人の血管は、高い血圧に耐えるために壁が厚く硬くなります。このため心臓は、血液をより強い力で押し出そうとします。こういう状態が続くと、心筋は厚くなり、伸び縮みしづらくなります。こうして、全身から心臓に戻る血液も、心臓から全身へ送り出す血液も少なくなってしまい、心不全を発症してしまうのです。

弁膜症
心臓には血液の出入りを調節する弁がありますが、その弁が損なわれると血流のコントロールが難しくなり、心臓に負担がかかるようになって、心不全を発症します。心臓の弁が損なわれる病気を弁膜症と言います。たとえば、大動脈弁(左室と大動脈の間の弁)や僧帽弁(左房と左室の間の弁)が、きちんと閉じなくなると血液の逆流が生じ(閉鎖不全症)、きちんと開かなくなると血液が流れにくくなって(狭窄症)、心臓にダメージを与えます。

心筋症
心筋の異常(心筋症)も心不全を引き起こします。心筋症とは、心筋が拡大したり、肥大したり、硬くなったりする病気です。代表的なものに、拡張型心筋症(左室が拡大し、心室の容量が増大するもの)や肥大型心筋症(左室の心筋が肥大するもの)があります。

心筋炎
心筋が炎症を起こしても、心不全に繋がります。心筋炎とは、ウイルスなどが心臓の中に侵入し、炎症を引き起こしたものです。

先天性心疾患
先天性(生まれつきの)の心臓の疾患が、心不全を引き起こすことがあります。たとえば、心房中隔欠損症(左右の心房を隔てる壁に穴が空いている状態)では、心房間に血液の逆流が生じ、心機能を低下させます。

不整脈
不整脈(規則的でない脈)は心不全を呼ぶ危険因子です。特に、頻脈発作を起こすような不整脈では、心筋が常に活発に働かざるをえなくなります。その結果、やがて心筋が疲労して、心不全を発症します。

肺疾患
肺高血圧症、肺血栓塞栓症(血栓が肺動脈を塞ぎ、肺循環を阻害するもの)、肺性心(肺でのガス交換が阻害され、肺高血圧をきたすもの)などの肺の疾患が、心不全の原因となることがあります。

薬剤性
薬剤が心不全の原因となるケースがあります。たとえば、抗不整脈薬やベータ遮断薬、抗がん剤などは、状況によっては心不全の原因となります。

心不全の原因として多いもの

日本では、入院した心不全患者の原因疾患として、最も多いのは虚血性心疾患で、次いで高血圧症、弁膜症の順です。虚血性心疾患が原因となる割合は、近年、上昇しています。

ただし、ポンプ機能が比較的保たれている心不全では、高血圧症が、かなり高率の原因疾患となります。急性心不全に限れば、最多の原因は虚血性心疾患です。

なお、欧米に比べると日本は、虚血性心疾患の頻度が低く、高血圧性心疾患の割合が高い傾向にあります。

心不全の前兆

心不全の前兆と言えるものは、残念ながらありません。
慢性心不全では、心拍出量を維持しようと代償機構が働くため、しばらくはポンプ機能が保たれるので、これといった症状が出ず、一般に症状が現われたときには、かなり心不全が進行した状態になっています。

ですので、初期の症状が疑われたところで、早め早めに医療機関を受診されることをお勧めします。

初期の症状で分かりやすいのは、ちょっとした負荷で息苦しさを感じる経験です。坂道や階段を上ったり、重いものを持ったりしたとき、それまでにない息切れが生じたりすると、心不全の発症が疑われます。夜間の頻尿や急激な体重増加も危険信号です。

心不全の症状

心不全の症状としてよく見られるのは、呼吸困難やむくみ(浮腫)です。
心不全になると、全身の臓器や血管で血流が滞ります。血液が滞留する(うっ血を起こす)と体液量が増加するので、体重が急激に増加します。また、尿の量が減り、下肢などにむくみが現われます。

肺でも血流が滞り、水が溜まるので(肺水腫)、血液への酸素の取り込みが邪魔され、肺が膨らみにくくなります。その結果、息切れや呼吸困難が生じ、疲れやすさや倦怠感、体のだるさなどを覚えるようになります。階段や坂道を上っていて息が切れたり、咳や痰が出たり、動悸がしたりするようになるわけです。

肝臓に血液がうっ滞すると、食後にお腹が張ったり、鈍痛がしたりします。

夜間に小水に起きるようになるのも、心不全の初期の症状です。昼間、活動しているときは、血液は全身に分布しているのですが、夜、体を横たえると、血液が体の中心部に戻り、腎臓の血流が増加します。そのため、就寝後の尿の量が増えるのです。

心不全が重症化すると、いよいよ呼吸が苦しくなります。夜間発作性呼吸困難(寝ているときに急に息苦しくなる症状)や、起座[きざ]呼吸(体を横たえていると呼吸が苦しいのに上半身を起こすと楽になる症状)が現われたりします。起座呼吸が起きるのは、体を水平にすると、下半身に行っていた血液が急に心臓に戻り、肺うっ血が強まることによります。胸が痛むこともあり、それで狭心症を疑って病院にかかるケースもあります。肺炎と間違える人もいます。

また、重症になると、ピンク色の痰が出たり、激しく咳込んだりします。

心不全の検査方法

心不全の検査方法には、血液検査、胸部レントゲン検査、心電図、心エコー検査などがあります。原因を詳細に解明するには、心臓カテーテル(右心カテーテル)検査を行ないます。

血液検査
主に心室から分泌され、心筋を保護する働きをするBNP(脳性ナトリウム利尿ペプチド)というホルモンがあります。このBNPは、心臓に負担がかかったり心筋が肥大したりすると、血液中に多く出てきます。自覚症状が出る前から血中濃度が上がるので、BNPの測定は心機能低下の早期発見に役立ちます。

胸部レントゲン検査
エックス線を当てて得た画像から、心臓の状態を診断します。心臓の拡大、肺での血液のうっ滞、胸水の有無などが確認できます。

心電図
患者さんの胸などに電極を付け、心臓の電気的な活動をグラフの形に記録して診断します。心筋梗塞や不整脈の有無などが確認できます。

心エコー検査
超音波(エコー。人の耳には聞こえない高い周波数の音波)を使って心臓の状態を探ります。ベッドサイドで体に負担をかけず行なえ、心臓の動きをタイムリーに観察できます。心臓の肥大や拡大、心筋梗塞や弁膜症の有無を確認したり、下大静脈(右房に静脈血を送り込む血管)の張りから、うっ血具合を観察したりします。

心臓カテーテル(右心カテーテル)検査
より正確な血行動態指標が得られる検査で、頸静脈などからカテーテル(細い管)を体内に挿入し、それを右心系を経由して肺動脈にまで持っていきます。この検査で、心拍出量、右房圧、肺動脈圧、肺動脈楔入[せつにゅう]圧(肺動脈枝をバルーン〈風船〉で膨らませたときの圧。左房圧として扱える)などが測定でき、心筋生検も同時に行なえます(図3)

右心カテーテル法
図3

その他、必要と思われる場合は、冠動脈造影、運動負荷検査、CT検査、MRI検査、核医学検査などを行なうことがあります。

心不全の治療方法

心不全の治療方法は、急性心不全と慢性心不全では異なります。

急性心不全での治療目標は、患者さんが自覚している諸症状を緩和し、臓器のうっ血状態を改善することで、救命を図り、容態を安定させることにあります。

慢性心不全での治療目標は、血行動態を改善し、予後を良くし、今後の生活の質(QOL)を向上させることにあります。

いずれにしても、原因となっている疾患に対する治療は必要です。たとえば、急性心筋梗塞が原因で心不全が起こっているのであれば、カテーテル治療(カテーテルを使い血管内にバルーン〈風船〉やステントを留置する治療)やバイパス手術(閉塞箇所を迂回する血行路を作る治療)を行なって冠動脈の閉塞状況を改善し、弁膜症が原因なら、弁置換術(弁の取り換え)や弁形成術(弁の修復)などの手術を行なって弁の不良を改善し、不整脈が原因なら、それに対する治療を行なう、といった具合です。

急性心不全の治療

急性心不全患者の多くは、集中治療室(ICU)や心臓集中治療室(CCU)に搬入されます。血圧の低下や腎不全、意識障害、ときにはショックも見られるので、必要であれば心肺蘇生を行ない、呼吸を管理します。

薬物治療としては、うっ血を改善する利尿薬や血管拡張薬、心筋の収縮力を強める強心薬などが用いられます。

薬物治療によっても血行動態が改善しない場合は、機械的に心臓のポンプ機能を補助・代行する補助循環法(assisted circulation)が検討されます。

補助循環法

IABP(大動脈内バルーンパンピング)
胸部下行大動脈にカテーテルを挿入してバルーン(風船)を留置し、心臓の拡張期にバルーンを膨らませ、収縮期にすぼめることで、心臓のポンプ機能を補います。拡張期は、拡張気圧が上昇することで冠動脈への血流が増え、心筋に多くの酸素が供給できるようになり、収縮期は、左室からの大動脈への血液の送り出しが、バルーンに吸引される形となって楽になる、というメカニズムです(図4)。カテーテルは大腿動脈から挿入します。

IABP
図4

PCPS(経皮的心肺補助法)
血液を体外循環させることで心臓と肺の機能を補助します。方法としては、脱血カテーテルを大腿静脈から右房まで、送血カテーテルを大腿動脈に、体の表面から(これを経皮的と言います)挿入し、それぞれのカテーテルの元を、体の外の人工肺装置に繋ぎます。脱血カテーテルを使って右房から吸引した静脈血を、人工肺に送って酸素化します。酸素化された血液は、遠心ポンプの力で送血カテーテルを通って大腿動脈に送り込まれます(図5)。こうして心臓のポンプ機能の低下を補うわけです。

PCPS
図5

急性心不全の重症度評価

急性心不全の重症度評価には、キリップ(Killip)分類、フォレスター(Forrester)分類、ノーリア(Nohria)分類が用いられます。

キリップ(Killip)類
身体所見により4つのクラスに分類するもので、予後の予測にも役立ちます。

クラスⅠ
心不全の徴候はない。

クラスⅡ
軽度から中等度の心不全。ラ音(肺からの異常な呼吸音)を聴取する領域が全肺野の50%未満。

クラスⅢ
重症の心不全。肺水腫が認められる。ラ音聴取の領域が全肺野の50%以上。

クラスⅣ
心原性ショックの状態。血圧が90mmHg未満。尿量の減少、チアノーゼ(皮膚や粘膜が青紫色になる状態)、冷たく湿った皮膚、意識障害を伴う。

フォレスター(Forrester)分類
血行動態に基づいて病型を分類したものです。右心カテーテルを使って得た心係数(体表面積1㎡当たりの心臓の毎分血流拍出量)と肺動脈楔入圧を基準に、病型を4つに分けます(図6)

フォレスター分類
図6

ノーリア(Nohria)分類
フォレスター分類と同様、血行動態に基づく分類ですが、フォレスター分類でのデータ収集が侵襲的である(体を傷つける恐れがある)のに対し、こちらは非侵襲的に予後予測が立てられます。末梢の皮膚が温かいか冷たいか(warm or cold)、うっ血所見で乾いているか湿っているか(dry or wet)を指標とします(図7)

ノーリア分類
図7

慢性心不全の治療

慢性心不全の治療は、まずは生活管理と薬物治療です。
生活管理として最も重要なのは、うっ血を改善するための塩分制限です。軽症では1日に6~8グラム、重症では4~6グラムに抑えます。過剰な水分の摂取も控えます。

過度な身体活動は心不全を悪化させますが、過剰な運動制限も心臓の循環調整力を低下させます。医師と相談しながらの、状況に合わせた運動療法が求められます。

慢性心不全における薬物治療は、心臓のポンプ機能の低下に伴って生じている過剰な代償反応(機能を維持しようとする各種の働き)を抑えることを目標としています。ホルモンや交感神経が過剰に活性化しているのを抑えようというわけです。

かつて心不全の薬物治療は、強心薬(ジギタリス)を用いてポンプ機能を強め、利尿薬によって体液量を減らし、心臓の負荷を軽くする、というものでしたが、このやり方では、一時的には症状が改善されるものの、予後を延長できないことが分かってきました。

そこで今では、血管を拡張する薬とベータ遮断薬を併用する方法に変わりました。強心薬の使用は、いわば「心臓を鞭打つ」ようなものですが、そのやり方よりも、心臓を休めるほうが予後がいい、というわけです。

慢性心不全の診断基準・重症度評価

慢性心不全の診断基準としてはフラミンガムFramingham基準、重症度評価としてはNYHA(ニーハ:New York Heart Association:ニューヨーク心臓協会)分類が広く用いられています。

【フラミンガム基準】
フラミンガム基準では、下の大症状のうちの2つ、あるいは大症状1つプラス小症状2つがあれば、慢性心不全とします。

大症状
・発作性夜間呼吸困難
・頸静脈怒張
・肺ラ音
・胸部エックス線における心拡大
・急性肺水腫
・聴診におけるギャロップ(Ⅲ音:過剰な心音)
・中心静脈圧の上昇(16cmH₂O以上)
・肝頸静脈逆流

小症状
・両側下腿の浮腫
・夜間咳嗽
・労作性呼吸困難
・肝腫大
・胸水の貯留
・肺活量の減少(最大量の3分の1以下)
・頻脈(1分間に120回以上)

【NYHA分類】
NYHA分類では、身体所見に基づいて慢性心不全をⅠ度~Ⅳ度に分けます。

Ⅰ度
心疾患はあるが、身体活動に制限はない。日常的な身体活動では、著しい疲労、動悸、呼吸困難あるいは狭心痛を生じない。

Ⅱ度
軽度ないし中等度の身体活動の制限があるが、安静時には症状は出ない。日常的な身体活動で疲労、動悸、呼吸困難あるいは狭心痛を生じる。

Ⅲ度
高度な身体活動の制限があるが、安静時には症状は出ない。通常以下の身体活動で疲労、動悸、呼吸困難あるいは狭心痛を生じる。

Ⅳ度
心疾患のため、いかなる身体活動も制限される。安静時にも心不全症状や狭心痛があり、わずかな労作でこれらの症状が増悪する。

心不全の治療薬

心不全の進行度を勘案しつつ、以下の治療薬を用います。

ACE阻害薬(アンジオテンシン変換酵素阻害薬)、ARB
ACE阻害薬(アンジオテンシン変換酵素阻害薬)には、血管を拡張して血圧を下げる作用と、心不全で亢進するアンジオテンシンⅡ[ツー]などのホルモンの働きを抑える作用があり、ARB(アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬)にも同様の作用が期待されています。

ベータ遮断薬
ベータ遮断薬には、交感神経の働きを抑える作用があります。心臓を働かせようとする交感神経からの信号を、ブロックしてくれるのです。したがって、徐脈(脈拍が遅い状態)でなければ、心不全の治療に有効です。

抗アルドステロン薬
アルドステロンというのは、血圧を上げるホルモンです。抗アルドステロン薬は、アルドステロンの分泌を抑えます。ただし、副作用として高カリウム血症を引き起こしやすいので、軽症の患者さんへの使用は控えます。

利尿薬
むくみや肺のうっ血を軽減するには、体液を減らす必要がありますが、利尿薬は体内の水分量を減らしてくれます。

強心薬(ジギタリス他)
ジギタリスは、心不全の予後を改善しないことが分かって、現在ではあまり使われなくなりましたが、頻脈や息切れを軽減する対症療法に、あるいは不整脈死を避けるために、今でも限定的に使われています。

その他のカテコールアミン類やホスホジエステラーゼ(PDF)阻害薬などの強心薬は、急性心不全では用いられますが、慢性心不全には使用されません。

心不全の手術方法

薬物療法が充分な効果を上げない場合は、非薬物療法を検討します。

非薬物療法には、カテーテルなどを使う非侵襲的なやり方と、外科的手技が必要なものとがあります。

カテーテルなどを使う非侵襲的な治療法としては、急性心不全の項で述べたIABP(大動脈内バルーンパンピング)やPCPS(経皮的心肺補助法)の補助循環法ほかに、CRT(心臓再同期療法)があります。

CRT(心臓再同期療法)
難治性の心不全患者の中には、左脚ブロック(心臓を拍動させる電気信号が左室側にうまく伝わらない状態)のために心臓収縮の時機にばらつきのある人がいます。

右室と左室と両室を隔てる中隔は、正常であれば同時に収縮します。しかし、左脚ブロックが起こっていると、それらが時機のばらつく協調性のない収縮を起こします。こうなると、送り出す血液量がさらに低下してしまいます。そんな患者さんに対して検討されるのがCRTです。

CRTでは、右室と左室の側壁に、冠状静脈(心臓の表面を走る静脈)を経由して左室を挟み込むようにリードを留置し、電気信号を同時に流して拍動が同期するようにします(これを両室同期ペーシングと言います)(図8)

CRT
図8

外科的手技を必要とする治療法

外科的手技を必要とする治療法には、VAD(補助人工心臓)と心臓移植があります。

VAD(補助人工心臓)
補助人工心臓は、心臓のポンプ機能を直接的に機械で代行する補助循環装置です。体外型と植込型があります。
IABP(大動脈内バルーンパンピング)やPCPS(経皮的心肺補助法)などの補助循環法を行なっても効果のない重症患者で、心臓移植の適応がある人には、移植までのつなぎとして用いられます。植込型では移植まで自宅待機も可能です。

心臓移植
心臓移植の対象となるのは、60歳以下で移植以外に有効な治療手段がない末期の患者さんです。日本では、移植後の5年生存率は91%、10年生存率は89%です。

心不全の予後・余命は?

心不全患者の予後はあまりかんばしいものではなく、1年死亡率は、最も重篤な人(NYHA分類Ⅳ度)で50~60%、次いで症状の重い人(同分類Ⅱ~Ⅲ度)で15~30%、軽い人(同分類Ⅰ~Ⅱ度)で5~10%となっています。心不全と診断されてから5年で、約半数の人が亡くなると考えられています。

2015年度の循環器疾患診療実態調査報告書によれば、心不全患者の入院死亡率は約8%です。また、心不全に関する大規模登録研究によると、心不全が増悪したことによる再入院率は、退院後6か月以内で27%、1年後では35%であり、再入院率が高いことが分かります。

心不全の予防方法

心不全の発症を予防するには、原因疾患に対する治療や危険因子の除去、食事や運動などの生活習慣の管理が求められます。

最大の原因疾患である虚血性心疾患を予防するには、動脈硬化が起こらないようにすることです。それには、高血圧や肥満に気をつけ、高脂血症や糖尿病にならないようにしましょう。高血圧は、それ自体が心不全の危険因子です。

生活習慣の面では、まずはバランスの良い食事です。特に、塩分の摂りすぎには要注意です。肥満している人は、カロリーの摂りすぎにも気をつけましょう。油脂を摂る際には、動物性のものより植物性のものを摂るようにしましょう。大量の飲酒も避け、過剰な水分の摂取も控えましょう。

喫煙は心血管疾患の危険因子です。禁煙すると、心血管疾患患者の再入院率が軽減することが明らかになっています。喫煙者には禁煙を強くお勧めします。

運動は、やりすぎても制限しすぎてもいけません。1日に20~30分程度の有酸素運動(ウォーキングなどの息の切れない軽い運動)を、医師と相談しつつ、状況に合わせて行ないましょう。

まとめ

心不全は、心疾患の中で最も死亡数が多く、予後も不良です。しかし、徐々に進行する慢性心不全では、悪化するまで症状が自覚しにくいため、症状が出て医療機関にかかったときには、治療が難しくなっているケースがしばしばあります。

心不全の危険因子を抱えている人、初期症状が疑われている人は、早め早めに専門医を受診し、適切な治療を受けることをお勧めします。

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