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うっ血性心不全とは?原因・症状・治療・手術方法

うっ血性心不全[ウッケツセイシンフゼン]

うっ血性心不全とは、心臓のポンプ機能が弱まり、充分な量の血液を全身に送れなくなって、血液の滞留(うっ血)が起こってしまった状態です。このため呼吸困難や倦怠感、むくみなどが生じます。悪化すると命にかかわります。

超高齢化社会を迎え、うっ血性心不全の患者さんは、急激に増加すると予想されています。 ここでは、うっ血性心不全がなぜ起こるのか、どういう症状を呈するのか、どんな治療や手術をするのか、などについて説明します。

うっ血性心不全とはどんな病気?

うっ血性心不全とは、全身で血液が滞留し、肺その他にうっ血(鬱血)が生じた心不全です。心不全とは、何らかの原因で心臓のポンプ機能が弱まり、全身に充分な量の血液を送り出せなくなった状態のことを言います。

心臓は、右心房(右房)、右心室(右室)、左心房(左房)、左心室(左室)の4つの部屋から成っています。二酸化炭素を多く含んだ全身から帰ってくる血液(静脈血)は、まず右房に入り、次いで右室に入って、ここから肺動脈(心臓から肺に向かう血管)を通って肺に送り込まれます。肺で二酸化炭素を排出し酸素をいっぱい取り込んだ血液(動脈血)は、肺静脈(肺から心臓に向かう血管)を通って左房に入り、次いで左室に入って、ここから大動脈に送り出され、全身を経めぐります(図1)

心臓のしくみ
図1

心臓から大動脈→動脈→細動脈→毛細血管→細静脈→静脈→大静脈を経て心臓に戻ってくる血液の流れを体循環、心臓から肺動脈→肺→肺静脈を経て心臓に戻ってくる血液の流れを肺循環と言います。

これらの循環を維持するために、心室や心房は規則的に収縮・拡張を繰り返しているのですが、そのポンプ機能がうまく働かなくなった状態が心不全というわけです。

うっ血性心不全の死亡率・余命

厚生労働省の平成22年人口動態統計によれば、日本では、心臓疾患で亡くなる人は年間約20万人で、がんの約37万人に次ぐ死亡数です。そのうちの約7万人が心不全による死亡です。日本人の死因としては、肺がんと並ぶ最も多い死因と言えるでしょう。65歳以上の人口の10%以上が心不全だと言われています。

心不全では1年のうちに、最も重篤な患者さん(NYHA[ニーハ]分類Ⅳ度)で50~60%、次いで症状の重い患者さん(同分類Ⅱ~Ⅲ度)で15~30%、軽い患者さん(同分類Ⅰ~Ⅱ度)で5~10%の人が亡くなります。

予後は不良であることが多く、心不全と診断されてから5年で約半数の人が亡くなると考えられます。

うっ血性心不全と心不全の違い

うっ血性心不全は、心不全という大きなくくりの中のひとつの病態です。
一般に、うっ血性心不全と言えば、慢性のうっ血性心不全状態を指します。体内にナトリウムと水分が過剰に蓄積され、四肢などにむくみ(浮腫)が現われます。体がさまざまな代償機構を働かせて血圧を維持しようとするので、かえって心臓への負担が増し、次第次第に心不全を悪化させてしまいます。

一方、急性心筋梗塞などが原因で発症する急性うっ血性心不全では、体内にナトリウムと水分が一定以上蓄積される前に、肺にうっ血が生じるなど、急激にさまざまな症状が現われます。左室から送り出される血液の量が著しく低下して血圧が維持できなくなり、ショックに至ることがあります。

心不全には、潜在性心不全という、安静時には心不全の症状がなく、階段を上るといった心臓に負荷のかかる行動をとったときに症状が出る心不全もあります。肺の疾患(肺高血圧症、肺血栓塞栓症、肺性心など)が原因となって心不全の症状が出る心不全もあります。

左心不全と右心不全

左[さ]心不全・右[う]心不全というのは、心不全状態の原因が、主に左室や左房(これらをまとめて左心系[さしんけい]と言います)にあるのか、右房や右室(これらをまとめて右心系[うしんけい]と言います)にあるのかという観点に立った分類です。

左心不全では、大動脈に送り出しきれなかった動脈血が左心系にうっ滞し、そのため血流の上流に当たる肺にも影響が出て、肺でうっ血が生じたり(肺うっ血)、水が溜まったり(肺水腫)します。つまり、左心不全の特徴は、肺循環系のうっ血にあります。

一方、右心不全では、肺に送り出しきれなかった静脈血が右心系にうっ滞し、全身からの静脈血の心臓への還流を滞らせます。そのため、手足がむくんだり、肝臓が腫れたり(肝腫大)、腹水が溜まったり、頸静脈が怒張したりします。つまり、右心不全の特徴は、体循環系のうっ血にあります(図2)

左心不全と右心不全
図2

左心不全の状態が続くと、右心系にも負荷がかかり、右心不全を合併することがあります。左心不全による肺への負荷が、肺動脈(右室から肺に静脈血を送る血管)の圧の上昇に繋がり(この状態を肺高血圧症と言います)、それが右心系にかかる圧の増大を呼んで、右心不全を引き起こすわけです。

うっ血性心不全の原因

うっ血性心不全の原因には、狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患(虚血性とは、血液が不足した状態のことです)、高血圧、弁膜症、心筋症、心筋炎、先天性心疾患、不整脈などがあります。

虚血性心疾患
糖尿病や高血圧、脂質異常症、肥満などがあると動脈硬化が進行し、血管が硬くなったり、血管の内側にコレステロールの塊(プラークと言います)ができたりします。この動脈硬化が心筋(心臓の筋肉)に酸素や栄養分を送る冠動脈(心臓の表面を走る動脈)にできると、冠動脈が狭まったり(狭心症)、詰まったり(心筋梗塞)して、血液がちゃんと流れなくなり、心筋が弱ったり死んだりして、心臓のポンプ機能を低下させます。急性心筋梗塞が起こると、急性うっ血性心不全を引き起こします。

高血圧性心疾患
高血圧症の人の血管には常に高い圧力がかかるので、それに耐えるために血管の壁が厚く硬くなりますが、そうなると心臓は、より強い力で血液を押し出さなければならなくなります。この状態が続くと心筋が厚くなって、伸び縮みしづらくなり、その結果、全身から戻る血液も、全身へ送り出す血液も、少なくなってしまいます。

弁膜症
弁膜症とは、心臓の弁が損なわれる病気です。僧帽弁(左房と左室の間の弁)や大動脈弁(左室と大動脈の間の弁)などが、ちゃんと開かなくなると血液が流れにくくなり(狭窄症)、閉じなくなると血液の逆流が生じ(閉鎖不全症)、心室・心房にダメージを与えます。

心筋症
心筋症とは、心筋に異常が生じ、その結果、心臓のポンプ機能が阻害される病気です。代表的なものに、拡張型心筋症(左室の心腔が拡張したもの)や肥大型心筋症(左室の心筋が肥大したもの)があります。

心筋炎
心筋炎とは、心筋の炎症性疾患です。ウイルスなどが心臓の中に侵入し、炎症を引き起こします。

先天性心疾患
心房中隔欠損症(左右の心房を隔てる壁に穴が空いている状態)などの先天性(生まれつきの)心疾患が、心不全を引き起こすこともあります。

不整脈
頻脈発作をきたすような不整脈(規則的でない脈)が持続すると、心筋が常に活発に働かざるをえなくなり、やがて疲労してうっ血性心不全を発症します。

肺疾患
肺高血圧症、肺血栓塞栓症(血栓が肺動脈を塞ぎ肺循環を阻害するもの)、肺性心(肺でのガス交換が阻害され肺高血圧をきたすもの)などの肺疾患も、心不全を呼びます。

薬剤性
抗不整脈薬やベータ遮断薬は、状況によってはうっ血性心不全の原因ともなります。抗がん剤なども、種類によってはうっ血性心不全を引き起こします。

うっ血性心不全の症状

うっ血性心不全では、全身の臓器や血管で血液の滞留(うっ血)が起こって、体液量が増加し、尿の量が減ります。そのため、体重が急激に増加し、下肢などにむくみ(浮腫)が現われます。

また、肺に水が溜まるため(肺水腫)、息切れや呼吸困難、倦怠感などが生じます。肺での酸素の取り込みを阻害するだけでなく、肺を膨らみにくくするからです。このため、階段や坂道を上っていて息が切れたり、咳や痰が出たり、動悸がしたりします。

心不全の初期では、夜間に小水に起きるようになります(夜間多尿)。日中、全身に分布していた血液が、夜、横になると体幹に戻り、腎臓の血流が増加するため、就寝後の尿量が増えるからです。

重症化すると、就寝時に息苦しくなったり(夜間発作性呼吸困難)、体を横(水平)にしていると呼吸が苦しいのに上半身を起こすと楽になる起座[きざ]呼吸という症状が現われたりします。なぜ寝ている姿勢より起きている姿勢のほうが呼吸が楽なのかというと、体を横(水平)にすると、下半身に行っていた血液が急に心臓に戻り、肺うっ血が強まるからです。

重症の人では、激しく咳込んだり、ピンク色の痰が出たりします。胸が痛むこともあり、胸痛が出てから、狭心症ではないかと疑って受診する人もいます。肺炎とよく間違えられることもあります。

うっ血性心不全の診断基準

うっ血性心不全の診断基準としては、フラミンガムFramingham基準が広く使われています。下の大症状のうちの2つ、あるいは大症状1つプラス小症状2つでうっ血性心不全と診断します。

大症状
・発作性夜間呼吸困難
・頸静脈怒張
・肺ラ音(肺からの異常な呼吸音)
・胸部エックス線における心拡大
・急性肺水腫
・聴診におけるギャロップ(Ⅲ音:過剰な心音)
・中心静脈圧の上昇(16cmH₂O以上)
・肝頸静脈逆流

小症状
・両側下腿の浮腫
・夜間咳嗽
・労作性呼吸困難
・肝腫大
・胸水の貯留
・肺活量の減少(最大量の3分の1以下)
・頻脈(1分間に120回以上)

うっ血性心不全の重症度の評価

うっ血性心不全の重症度の分類には、身体所見に基づいたNYHA(ニーハ:New York Heart Association:ニューヨーク心臓協会)作成のものが広く用いられています。Ⅰ度~Ⅳ度に分けられます。

Ⅰ度
心疾患はあるが、身体活動に制限はない。日常的な身体活動では、著しい疲労、動悸、呼吸困難あるいは狭心痛を生じない。

Ⅱ度
軽度ないし中等度の身体活動の制限があるが、安静時には症状は出ない。日常的な身体活動で疲労、動悸、呼吸困難あるいは狭心痛を生じる。

Ⅲ度
高度な身体活動の制限があるが、安静時には症状は出ない。通常以下の身体活動で疲労、動悸、呼吸困難あるいは狭心痛を生じる。

Ⅳ度
心疾患のため、いかなる身体活動も制限される。安静時にも心不全症状や狭心痛があり、わずかな労作でこれらの症状が増悪する。

うっ血性心不全の検査方法

うっ血性心不全の検査としては、血液検査、胸部レントゲン検査、心電図、心エコー検査などが行なわれますが、詳細な原因解明には心臓カテーテル検査が必要です。

血液検査
原因疾患が何であるのかを探るのに血液検査は役立ちますが、中でもBNP(脳性ナトリウム利尿ペプチド)というホルモンの血中濃度の測定は、うっ血性心不全の検査に有用です。BNPは主に心室から分泌され、心筋を保護する働きをしています。心臓に負担がかかったり、心筋が肥大したりすると血中濃度が増します。自覚症状が出る前から濃度が上がるので、心機能低下の早期発見に役立ちます。

胸部レントゲン検査
X線を当てて心臓の画像を得る検査です。心臓が大きくなっていないか、肺に血液が滞っていないか、胸水がないか、などが確認できます。

心電図
心電図とは、被験者の胸等に電極を付け、心臓の電気的な活動をグラフの形に記録するものです。急性心筋梗塞や不整脈などを診断します。

心エコー検査
心エコー検査とは、超音波(エコー)という人の耳には聞こえない高い周波数の音波を使って心臓の状態を探るものです。ベッドサイドで体に負担をかけず簡便に行なうことができ、心臓の動きをタイムリーに観察できます。心臓の肥大や拡大の有無を見たり、急性心筋梗塞や弁膜症などがないか調べたり、下大静脈(右房に静脈血を戻す血管)の張りからうっ血具合を観察したりします。

心臓カテーテル検査
頸静脈などから入れたカテーテル(細い管)を、右心系を経由して肺動脈にまで挿入して行なう検査で、心拍出量、右房圧、肺動脈圧、肺動脈楔入[せつにゅう]圧(肺動脈枝をバルーン〈風船〉で膨らませたときの圧。左房圧として扱える)など、より正確な血行動態指標が得られます。心筋生検も同時に行なえます(図3)

右心カテーテル法
図3

その他、必要に応じて冠動脈造影、運動負荷検査、CT検査、MRI検査、核医学検査などが行なわれることがあります。

うっ血性心不全の治療(手術)方法

原因となっている疾患に対する治療

心不全の症状自体の改善には薬物治療や非薬物治療が用いられますが、それと同時に、原因となっている疾患に対する治療も行なわれます。

たとえば、急性心筋梗塞が原因であれば、冠動脈の閉塞状況を改善するために、カテーテル治療(カテーテルを利用して血管内にバルーン〈風船〉やステントを留置する治療)やバイパス手術(閉塞箇所を迂回する血行路を作る治療)を検討し、心臓弁膜症が原因なら、弁の不良を改善するために、弁置換術(弁の取り換え)や弁形成術(弁の修復)などの手術を検討します。

薬物療法

心臓の負担を軽くするには血圧を下げる必要があり、それには、血管を拡張する作用のある薬のACE阻害薬(アンジオテンシン変換酵素阻害薬)やARB(アンジオテンシンⅡ[ツー]受容体拮抗薬)などが使われます。体内の水分量を減らす利尿剤も併用します。

徐脈(脈拍が遅い状態)でなければ、交感神経の働きを抑えるベータ遮断薬も有効です。ベータ遮断薬は、心臓を働かせようとする交感神経からの信号をブロックしてくれます。

うっ血性心不全の治療は、1980年代に入って大きく変わりました。それまでは、強心薬(ジギタリス)を用いてポンプ機能を強め、利尿薬によって負荷を軽くする、というやり方でした。しかしこの方法では、一時的には症状が改善されるものの、予後を延長できないことが分かり、血管を拡張する薬とベータ遮断薬を併用する方法に変わりました。強心薬で心臓を鞭打つよりも心臓を休めるほうが、予後がいいと分かったわけです。

非薬物療法

一般に、薬物療法が充分な効果を上げない場合、非薬物療法が検討されます。

①CRT(心臓再同期療法)

難治性の心不全で左脚ブロック(心臓を拍動させる電気信号が左室側にうまく伝わらない状態)により心臓収縮の時機にばらつきのある人に対しては、CRTを検討します。

CRTの原理は次のようなものです。正常な状態では、右室と左室と両室を隔てる中隔は同時に収縮するのですが、左脚ブロックが起こると、それらが時機のばらつく協調性のない収縮をし、送り出す血液量がさらに低下します。そこで、右室と左室の側壁に、冠状静脈(心臓の表面を走る静脈)を経由して左室を挟み込むようにリードを留置し、電気信号を同時に流して拍動が同期するようにするのです(これを両室同期ペーシングと言います)(図4)

CRT
図4

②補助循環治療

IABP(大動脈内バルーンパンピング)
大腿動脈からカテーテルを胸部下行大動脈に挿入してバルーン(風船)を留置し、心臓の拡張期にはバルーンを膨らませ、収縮期にはすぼめる方法です。こうすると、拡張期には、拡張気圧が上昇することで冠動脈への血流が増加して心筋への酸素の供給が増え、収縮期には、バルーンに吸引される形となって左室からの血液の送り出しが楽になります(図5)

IABP
図5

PCPS(経皮的心肺補助法)
大腿動脈と大腿静脈のそれぞれに、経皮的に(体の表面から)送血・脱血カテーテルを挿入し、人工心肺装置で血液を体外循環させる方法です。カテーテルを大腿静脈から右房まで挿入して抜いた血を、人工肺で酸素化し、遠心ポンプで大腿動脈に送り込みます。(図6)

PCPS
図6

VAD(補助人工心臓)
IABPやPCPSなどの補助循環治療を行なっても効果のない重症患者で、心臓移植の適応がある人の場合は、移植までのつなぎとして補助人工心臓を使います。体外型と植込型があります。

③心臓移植

60歳以下で移植以外に有効な治療手段がない末期の患者さんには、心臓移植が検討されます。日本では、移植後の5年生存率は91%、10年生存率は89%です。

うっ血性心不全の食事療法

うっ血性心不全では、食事制限が重要です。特に塩分の制限が求められます。塩分を摂りすぎると体内の血液量が増え、心臓に負担をかけることになるからです。摂取は1日6グラム以下に抑えましょう。

肥満により心臓に負担のかかっている人は、カロリーの制限が求められます。動物性脂をなるべく避け、植物性脂を摂るようにしましょう。

過剰な水分の摂取も控えましょう。コーヒーなどの刺激物や大量飲酒も避け、禁煙しましょう。

また、運動不足や肥満はリスク要因です。過度の運動は心不全を悪化させますが、過剰な運動制限も循環調節力を衰えさせます。状態に合わせた運動を行ないましょう。1日に20~30分程度の有酸素運動(ウォーキングなどの息の切れない軽い運動)が望まれます。

まとめ

うっ血性心不全は、慢性的に経過するため、なかなか病気であることが自覚できません。進行し、呼吸困難や倦怠感の増大など、生活の質が損なわれるようになって、初めて医療機関にかかる人が多いのですが、重症化していればいるほど、治療は難しく、予後も不良です。

息切れや足のむくみなどは、頻度の多い初期症状です。そうした症状が現われたら、専門医での受診をお勧めします。早め早めに適切な治療を受けることが肝心です。

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