5月17日と18日、ニューハート・ワタナベ国際病院の瀬口龍太らのチームは、僧帽弁閉鎖不全症の患者5人に対して、心拍動下僧帽弁形成術(人工腱索再建)を実施し成功しました。5人のうち最高齢者は89歳で、80代以上の高齢者に施術を行いました。また5人のうち1人は以前他院で手術をした方の再手術症例となりました。今後は積極的に高齢者や再手術が必要な人に行っていく予定です。
心拍動下僧帽弁形成術とは、経心尖(注1)アプローチで人工心肺(注2)を使用せず、人工腱索(注3)再建による僧帽弁形成を行うデバイス、「NeoChord®」を使用した手術方法です(図1)。人工腱索再建は従来の心停止下の僧帽弁形成術においても多用される方法のひとつですが、NeoChord®というデバイスを使用することにより、心臓を動かしたまま人工腱索再建を行い僧帽弁(注4)の逆流を制御することが可能となります。
図1
NeoChordを使った心拍動下僧帽弁形成術の利点は、以下の3点です。
- 人工心肺を使わない
人工心肺を使わずに僧帽弁の形成を行えることが最大のメリットです。従来の手術では心房を開いて僧帽弁を形成する必要があったため、心臓を止めた上で人工心肺装置を使って全身に血液を送る必要があり、全身の臓器へ炎症を及ぼし負担をかけるリスクがありました。心拍動下僧帽弁形成術では人工心肺を使わずに手術を行う為、生理的な心拍動による血流で全身の臓器が灌流され負担を最小限に抑え、人工心肺を用いた手術の合併症(脳梗塞など)や心停止に伴う一時的な心機能低下を回避することが出来ます。
- 創(キズ)が小さい
心尖部からアプローチする手術なので左の胸に5−7cmの切開を行うだけで手術が可能です。体への負担が少ないため術後の早期回復が期待できます。また高齢者や持病、既存の合併症があり、従来の人工心肺を用いた心臓手術が困難な患者にも適応される可能性が広がりました。
- 心臓が拍動している状態で治療効果の判定が可能
心拍動下でリアルタイムに僧帽弁の逆流が制御されることを確認できることも大きなメリットです。従来の心停止下の手術では弁の形成をした後、心臓が動いた状態になるまで弁の逆流が制御されたことの最終的な確認が出来ませんでした。NeoChord®を使用した手術方法では経食道心エコーで弁の状態を観察しながら人工腱索の長さを調整することが出来ます。
2011年からこれまでに全世界で1,750人以上の方がこの治療を受けられており、欧米において確立された治療法として認可されております。日本では当院での8症例を含め10症例です。
ニューハート・ワタナベ国際病院は、今後も日本のみならず世界中の心臓病に苦しむ患者さんをひとりでも多く救うため、常に最先端かつ最高度な技術を追求実践し、“安全で体に負担をかけない”をモットーに診察や手術を行ってまいります。
さらに詳しく知りたい方はこちら: https://newheart.jp/operation/opmvp.php
- 心尖:心臓の先端
- 人工心肺:心臓手術などで自己の心臓と肺を一時的に代替する循環装置。
- 腱索 左心室の筋肉(乳頭筋)から僧帽弁を支持する腱組織。
- 僧帽弁: 左心室と左心房の間にある弁。
【心臓血管外科医 瀬口龍太】
ニューハート・ワタナベ国際病院心臓血管外科医長。2009年に金沢大学医学部卒業。医学博士。心臓血管外科専門医。
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