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大動脈弁手術(大動脈弁形成術・置換術)とは?
手術方法と自己心膜を使うメリットを解説

大動脈弁形成術とは、心臓の弁のひとつである大動脈弁を修復する手術です。

心臓にある4つの弁の中で大動脈弁は、僧帽[そうぼう]弁と並んで損なわれやすい、手術で修復することの多い弁です。

大動脈弁が損なわれると、血液が流れにくくなったり逆流を起こしたりして、心臓に負担をかけ、合併症として心不全(心臓のポンプ機能が正常に働かない状態)を引き起こす危険性が出てきます。

ここでは、大動脈弁形成術とはどのような手術であり、特にその際、自己心膜を使ったらどのようなメリットがあるのかを説明します。

大動脈弁形成術とは?

大動脈弁形成術とは、大動脈弁を修復する際、自分自身の弁を縫ったり繋いだりして活かしつつ、損なわれた箇所を治す手術方式です。

近年、その大動脈弁形成術のひとつとして、自己心膜を用いる大動脈弁形成術が、有力な方式として注目を集めています。これは、名前は形成術ですが、自分自身の弁を用いて修復するのではなく、自己心膜(自分の心臓を包んでいる自分自身の膜)を用いて弁を修復するものです。

この記事は、大動脈弁形成術の全般を説明しつつ、特に、自己心膜を用いる大動脈弁形成術について解説します。

自己心膜を用いて大動脈弁

大動脈弁を修復する手術には、大動脈弁形成術のほかに、大動脈弁置換術があります。
こちらは、自分自身の弁を活かしたり自己心膜を用いたりするのではなく、損なわれた弁を取り去って、新たに人工弁(機械弁、または牛や豚の一部から作られた生体弁)に置き換える手術方式です。

大動脈弁置換術の欠点

大動脈弁置換術の欠点は、使われる人工弁に由来します。人工弁には、特殊なカーボン材でできた機械弁と、牛の心膜や豚の大動脈弁から作られた生体弁があります(図1)

機械弁と生体弁
図1

機械弁は半永久的に使えるという長所がありますが、弁自体に血栓(血の塊)が生じやすく、一生涯にわたって血液を固まりにくくする薬(抗凝固剤:ワーファリン)を服用しなくてはなりません。

生体弁は、手術後の抗凝固剤は不要ですが(ただし、手術後3~6か月は服用する必要があります)、欠点は機械弁ほど長持ちしないことです。一般に耐用年数は15~20年、若い人だと10年もたずに劣化します。そうなると再手術をせざるをえなくなるので、生体弁は若い人には勧められません。

また、人工弁は本来の大動脈弁に比べ弁口(弁の開口部)面積が小さいため、手術後、人工弁の前後で血流に圧力差が生まれ、狭窄症(血液が通りにくくなった状態)を残してしまうことがあります。

大動脈弁形成術の長所

大動脈弁置換術に対する大動脈弁形成術の長所は、弁口の狭窄が生じず、人工弁とは違って弁の前後で血流の圧力差がほとんど生じないで済み、限りなく正常に近い大動脈弁を取り戻すことができることです。

このように血行動態に優れているだけではなく、血栓症や感染性心内膜炎を起こすリスクも低く、また、弁自体への血液の凝固もないので、手術後に抗凝固剤を服用する必要もありません。

抗凝固剤を服用していると、血が固まらず出血し続ける危険性が生じます。そのため、出血が避けられない大手術や歯の治療等を予定している人、出産を控えている女性などでは、弁置換術が行なえないのですが、そうした人でも、弁形成術なら受けられます。

大動脈弁形成術の手術適応疾患

大動脈弁形成術の手術適応疾患は、「大動脈弁閉鎖不全症」と「大動脈弁狭窄症」です。

大動脈弁閉鎖不全症とは

大動脈弁閉鎖不全症とは、大動脈弁が閉まるべきときにぴったりとは閉まらなくなり、動脈血の逆流が起こる病気です。

大動脈弁は左心室と大動脈の間にあり、心臓の収縮期には開いて左心室の血液を大動脈に送り出し、拡張期には閉じて、左心室に左心房から来る血液が溜まるのを助けます(図2、3)。その大動脈弁が心臓の拡張期にちゃんと閉じなくなると、すき間を通して動脈血が逆流を起こしてしまうのです(図4)

心臓のしくみ
図2
正常な血液の流れ
図3
大動脈弁閉鎖不全症での血液の流れ
図4

弁自体が損なわれる場合と、大動脈基部(大動脈弁に続く大動脈の入り口部分)が損なわれる場合があります。

大動脈弁閉鎖不全症の原因と症状

弁自体に異常をもたらす主な原因には、先天性二尖[にせん]弁、リウマチ熱の後遺症、感染性心内膜炎(弁が細菌感染したもの)、動脈硬化などがあります。先天性二尖弁というのは、本来、大動脈弁に3枚ある弁尖(扉の役割を果たす部分)が2枚しかない先天性の(生まれつきの)疾患です(図5)

大動脈二尖弁
図5

大動脈基部に異常をもたらす主な原因には、大動脈弁輪拡張症(弁輪とは弁の外周のことです)(図6)、マルファン(Marfan)症候群(遺伝子の異常で全身の細胞の弾力性がなくなる病気)、大動脈解離などがあります。

大動脈弁輪拡張症
図6

しばらくは無症状ですが、やがて合併症の心不全を起こし、呼吸困難や動悸などの症状が現われるようになります。薬では閉鎖不全は治らないので、症状が現われるようになったら手術する必要があります。

大動脈弁狭窄症とは

大動脈弁狭窄症とは、大動脈弁が開くべきときにちゃんと開かなくなり、血液が大動脈に送り出しにくくなる病気です。つまり、心臓の収縮期に弁口が狭くなり(狭窄し)、血液の通過障害が起こるのです(図7)

大動脈弁狭窄症での血液の流れ
図7

大動脈弁狭窄症の原因と症状

主な原因としては、先天性二尖弁、動脈硬化、リウマチ熱の後遺症などがあります。しばらくは無症状ですが、やがて左心室が肥大し、心臓の機能が低下して、失神、狭心痛(胸の痛み)、呼吸困難などの症状が現われるようになります。突然死を招くこともあります。

大動脈弁閉鎖不全症同様、薬では治らないので、症状が現われるようになったら手術する必要があります。症状が現われていない場合でも、心機能が低下しているときには手術を検討します。2012年の日本循環器学会らの「弁膜疾患の非薬物治療に関するガイドライン」でも、自ら運動制限をして「全く症状がない」とする患者さんがまま見受けられる点に注意を喚起しています。

大動脈弁に対する手術法

大動脈弁置換術

詳しくはこちら

大動脈弁狭窄症のカテーテル治療

近年、新しい大動脈弁狭窄症の治療法として、経カテーテル大動脈弁移植(あるいは留置)術(タビ:TAVI=Transcatheter Aortic Valve Implantation。経カテーテル大動脈弁置換術〈タバ:TAVR=Transcatheter Aortic Valve Replacement〉とも言います)が行なわれるようになりました。胸をメスで切り開かず、心臓も止めずにカテーテルで弁の狭窄を改善する、低侵襲の(体に極力メスを入れない)治療法です。

TAVIでは、折り畳んだバルーン(風船)と生体弁をカテーテルに装着し、太腿の付け根などからカテーテルを動脈に挿入して大動脈弁の場所まで持って行きます。そこでまずバルーンを、次いで生体弁を膨らませて留置すると、狭窄している自己弁に代わって、生体弁が正常な弁機能を果たすようになります(図8)

経カテーテル大動脈弁置換術(TAVR)
図8

たしかに低侵襲ではありますが、欠点は、留置する生体弁が外科的に埋める弁よりも長持ちしないことです。このためTAVIは、外科手術に耐えられない超高齢者や、いろいろな理由で外科手術が難しい人にはメリットがありますが、若い人にはデメリットになる可能性があります。若い人はTAVIよりも、しっかりとした外科手術を受けたほうがいいでしょう。

死亡率

日本胸部外科学会が全国集計したデータ(2014年)によれば、単独大動脈弁手術に限れば、大動脈弁形成術の病院死亡率は約3.0%(術後院内30日以内死亡は約1.7%)となっています。ちなみに、弁膜症手術全般(再手術を除く)での病院死亡率は約3.1%(術後院内30日以内死亡は約1.9%)です。

大動脈弁形成術の欠点

大動脈弁形成術の欠点は、石灰化が進んで硬くなるなど、損傷の程度が激しいと弁の修復が難しいこと、再弁置換時には使えないこと、先天性二尖弁の一部の症例には適さないことなどです。

自己心膜を用いる大動脈弁形成術の欠点としては、上記に加え、使用する心膜がないとできないことがあげられます。

弁置換術より弁形成術のほうが生理的に自然なので、弁形成術が行なえるのであれば、それに越したことはないのですが、上記のような難点がある場合には、一般に弁置換術が用いられます。また、弁置換術よりも弁形成術のほうが技術的に難しく、心停止時間も長いことも欠点と言えます。

したがって、弁形成術を受ける場合は、弁形成術の経験が豊富な医師を選ぶ必要があります。

大動脈弁形成術の手術方法

大動脈弁形成術の手術には、心臓へのアプローチの仕方が違う2つの方法があります。胸骨正中[きょうこつせいちゅう]切開手術と小切開手術(MICS=minimally invasive cardiac surgery:ミックス)です。

胸骨正中切開手術とは、のどの下からみぞおちのあたりにかけ、胸を縦に25~30センチほど切り開き、次いで、開胸器で胸を押し広げて心臓を露出させて行なう手術です。執刀医は心臓を確実に視野に収められますが、胸の正面にある大きな胸骨を切り開くことになるので、患者さんには体に大きな負担がかかります。

胸骨正中切開手術

一方、小切開手術とは、胸骨正中切開手術の欠点をカバーすべく開発された低侵襲の(極力メスを入れる範囲を小さくした、体にやさしい)手術です。胸骨を切らず、肋骨と肋骨の間の筋肉を切り開き、心臓にアプローチします。皮膚の切開は6~8センチ程度で済みます。出血が少なく、体の負担も軽くなるので、手術後、退院するまでの期間や社会復帰するまでの期間が大幅に短縮されます。

小切開手術

大動脈弁の修復方法としては、弁尖が傷んでいる場合は、縫ったり繋いだりして修復します。弁輪が拡張するなど大動脈基部が損なわれている場合は、人工弁を用いたり(ベントール手術)、自己弁を温存したりして(デイビッド手術やヤクー手術)修復します。

自己心膜を用いる大動脈弁形成術の手術方法

自己心膜を用いる大動脈弁形成術では、小切開(MICS:ミックス)または胸骨正中切開で開胸し、露出した心臓から自己心膜を切り取ります。それを特殊な保護液で固定して、自らの大動脈弁と同じ形の新たな弁尖に作り変えます。次に、その新たな弁尖を大動脈弁の位置に縫い付けます(図9)

大動脈弁形成術
図9

こうした手術のやり方からすると、形成術と言うより作成術と言ったほうが、言葉としては適切かもしれません。これまでこの手術方法は胸骨正中切開のみで行っておりましたが、小切開手術(MICS:ミックス)も可能となりました。(2023年5月)

自己心膜を用いる大動脈弁形成術のメリット

自己心膜を用いる大動脈弁形成術のメリットは、弁置換術に比べ、より生理的であり、生体弁と比べても、同等以上の耐久性が期待できる、という点にあります。

ニューハート・ワタナベ国際病院では、大動脈弁形成術を行なう場合、この自己心膜を用いる方法を採用しています。

この方法は、東邦大学医療センター大橋病院の尾崎重之教授が考案したものです。新しい技術のため、長期にわたる耐久性はまだ明らかではありませんが、10年経過を観察したところ、約9割の患者さんで、弁が再手術を要せず機能している、という尾崎教授の報告があり、生体弁と同等以上の成績が期待されています。

生体弁よりも弁が大きく開放し、弁輪が小さく通常の人工弁に置き換えられない高齢者や、出産を希望する女性などには理想的な手術と言えます。

すでに述べたように、弁置換術と違い、血液を固まりにくくする薬(抗凝固剤)を服用する必要がないことも、この手術法の長所と言えるのですが、最近では、抗凝固剤の服用に抵抗を感じる若い男性の中から、この手術を積極的に希望する方が出てきています。

血流量の違いについて

正常な大動脈弁
正常な大動脈弁

大動脈弁形成術後
大動脈弁形成術後

機械弁置換術後
機械弁置換術後

生体弁置換術後
生体弁置換術後

手術方法を選択する基準

大動脈弁閉鎖不全症や大動脈弁狭窄症に対する手術法を選択する際には、弁の状態や患者さんの年齢、合併疾患の有無などを総合的に判断する必要があります。その上でニューハート・ワタナベ国際病院では、弁形成術が可能と判断した場合は、自己心膜を用いる大動脈弁形成術を行なっています。

弁形成術が難しいと判断した場合は、弁置換術になります。その場合ニューハート・ワタナベ国際病院では、小切開手術を第一選択として検討しています。

手術に際しては、薬で一時的に心臓を止めます。心臓が止まっている間、人工心肺が全身への血流を代行します。

一般に弁形成術は、弁置換術に比べ心臓を停止する時間が長くなります。心臓が停止している時間が長ければ長いほど心筋(心臓の筋肉)にダメージを与え、手術後の合併症も増えるので、手術には正確さと共にスピードが要求されます。

ニューハート・ワタナベ国際病院では、心停止液(心臓を止める特別な液)の組成・投与法を改善して、心停止下の手術がより安全に行なえるようにし、患者さんの体の負担を大幅に軽減しました。

大動脈弁形成術の注意点

大動脈弁形成術で注意すべき点は、弁置換術より難しく、病院の実力に差があることですが、自己心膜を用いる大動脈弁形成術については特に、技術的に高度であることから、この手術を行なっている病院自体がまだそれほど多くありません。弁輪に新たな弁尖を縫い付ける技術などは、執刀する医師によって技量に大きな開きがあります。

したがって、自己心膜を用いる大動脈弁形成術を希望される方は、経験豊富な信頼できる心臓外科医を慎重に選ぶ必要があります。

大動脈弁形成術の手術時間

大動脈弁形成術の手術時間は、ニューハート・ワタナベ国際病院においては、自己心膜を採取する必要から胸を大きく切り開かねばならず、3時間から3時間半です。

手術後の生活

大動脈弁閉鎖不全症や大動脈弁狭窄症でポンプ機能を低下させた心臓は、弁形成術を受け、弁を元の形に修復したからといって、すぐに機能が回復するわけではありません。

したがって、日常の生活に無理は禁物で、特に、塩分や水分を摂りすぎて血圧を上げないよう、食事には気をつける必要があります。経過をしっかり観察する意味で、定期的な心エコー(超音波)検査などは、必ず受けるようにしましょう。

胸骨正中切開をした場合は、切り開いた胸骨が完全に元のようにくっつくまでに2ヶ月ほどを要します。その間は、運動は控え、安静にしてください。

まとめ

自己心膜を用いる大動脈弁形成術の対象になるのは、高齢者などの、弁輪が小さく通常の人工弁を入れることのできない人や、出産を希望する女性、若い人などです。

特に若い人においては、生体弁に置き換える弁置換術では弁の寿命が短いという欠点があるため、より寿命の長い自己心膜を用いる弁形成術に、期待が寄せられています。

自己心膜を用いる大動脈弁形成術を行なうかどうかは、大動脈弁の状態、患者さんの年齢、合併疾患の有無などを医師が総合的に判断し、それを基に患者さんと充分に相談したうえで決定する必要があります。先天性二尖弁の場合、形態によっては弁形成術が適さないことがあるので、医師と相談してください。

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