不整脈の原因にアプローチする低侵襲治療
ニューハート・ワタナベ国際病院の循環器内科では、日本不整脈心電学会不整脈専門医研修施設として年間300例以上の心臓カテーテルアブレーション治療(以下、アブレーション)を行っています。
カテーテルアブレーションは、脈が速くなるタイプの不整脈に対して、足の付け根などから細い管を心臓内へ挿入し、不整脈の原因となる異常な電気信号の発生部位や回路を治療する方法です。
当院では、患者さんの病状、年齢、生活背景、ご希望を踏まえ、薬物療法やカテーテル治療などの選択肢を丁寧にご説明し、一人ひとりに合った治療方針をご提案しており、日帰り手術も可能です。
目次
アブレーションとは?
アブレーションとは、不整脈の原因となる心臓内の異常な電気信号や、その電気信号が通る回路に対して、カテーテルを用いて治療を行う方法です。
治療では、足の付け根などの血管からカテーテルを挿入し、心臓の中まで進めます。その後、不整脈の原因となる部位を特定し、高周波電流による焼灼により不整脈を起こしにくくすることを目指します。
薬で症状を抑える治療とは異なり、アブレーションは不整脈の発生源や回路に直接アプローチできる点が特徴です。ただし、不整脈の種類や患者さんの状態によって、治療効果や再発の可能性は異なります。そのため、治療前には検査結果をもとに、期待される効果やリスクについて十分にご説明します。
頻脈性不整脈とは
心臓は通常、一定のリズムで収縮と拡張を繰り返しています。この心臓のリズムが乱れる状態を「不整脈」といいます。不整脈の中でも、通常より脈が速くなるものを「頻脈性不整脈」と呼びます。
頻脈性不整脈には、以下のような種類があります。
- 心房細動(AF)
- 心房粗動(AFL)
- 発作性上室性頻拍(PSVT)
- WPW症候群
- 房室結節リエントリー頻拍(AVNRT)
- 心房期外収縮(APC)
- 心室期外収縮(PVC)
- 心室頻拍(VT)
- 心室細動
頻脈性不整脈では、動悸、息切れ、胸部不快感、めまい、疲れやすさなどの症状が出ることがあります。一方で、自覚症状がほとんどなく、健康診断や心電図検査で偶然見つかることもあります。
特に心房細動は頻度の高い不整脈の一つで、高齢化に伴い患者数が増加しています。心房細動では動悸などの症状だけでなく、脳梗塞や心不全のリスクにも注意が必要です。
検査
心電図、ホルター心電図、心臓超音波検査、CT検査などを組み合わせて、不整脈の種類や心臓の状態を評価します。
アブレーション治療の対象となる主な不整脈
当院では、主に以下のような不整脈に対してカテーテルアブレーション治療を行っています。
- 心房細動(AF)
- 心房粗動(AFL)
- 発作性上室性頻拍(PSVT)
- WPW症候群
- 房室結節リエントリー頻拍(AVNRT)
- 心房期外収縮(APC)
- 心室期外収縮(PVC)
- 心室頻拍(VT)
- その他、医師が治療適応と判断した頻脈性不整脈
治療の適応は、不整脈の種類、症状の程度、薬物療法の効果、心機能、年齢、生活背景などを総合的に判断して決定します。
アブレーション治療までの流れ
1. 外来受診
まず外来で、現在の症状、これまでの検査結果、内服薬、既往歴などを確認します。
必要に応じて、以下のような検査を行います。
- 心電図
- ホルター心電図
- 採血
- 胸部レントゲン
- 心臓超音波検査
- 心臓CT検査
- その他、必要と判断される検査
これらの結果をもとに、アブレーション治療が適しているかどうかを判断します。治療が選択肢となる場合には、期待される効果、入院期間、合併症のリスク、治療後の生活、再発の可能性などについてご説明し、患者さんと相談しながら治療方針を決定します。
2. アブレーション治療、当日
治療の当日は通常、歩いて手術室またはカテーテル室へ移動していただきます。
治療は、局所麻酔、鎮静、または全身麻酔で行います。麻酔の方法は、不整脈の種類、治療内容、患者さんの状態に応じて判断します。
心房細動のアブレーションでは、全身麻酔または深い鎮静で行うことが多く、治療中の痛みや不安をできるだけ軽減できるよう配慮しています。
治療時間は不整脈の種類や病状によって異なりますが、心房細動のアブレーションでは数時間程度かかることが一般的です。
治療後は、出血予防のため一定時間ベッド上で安静にしていただきます。その後、心電図モニターで脈の状態を観察します。
3. 治療翌日・退院
治療後の経過に問題がなければ、翌日以降に退院となります。
退院前には、以下についてご説明します。
- 退院後の生活上の注意点
- 内服薬の継続について
- 運動や入浴の再開時期
- 受診が必要な症状
- 次回外来受診日
- 再発の可能性と経過観察の必要性
基本的には2泊3日の入院を標準としていますが、病状や治療内容によっては、日帰り治療や1泊2日入院に対応できる場合もあります。
なお、日帰り治療・短期入院を検討できる主な疾患には、以下のようなものがあります。
- 心房細動(AF)
- 心房粗動(AFL)
- 発作性上室性頻拍(PSVT)
- WPW症候群
- 期外収縮
- 一部の心室性不整脈
ただし、すべての患者さんが日帰り治療の対象になるわけではありません。年齢、基礎疾患、心機能、使用している薬、治療内容、治療後の安全性などを総合的に判断し、医師が適応を決定します。安全を最優先に、患者さんにとって無理のない治療スケジュールをご提案します。
治療費用
アブレーション治療は健康保険が適用され、治療費用の自己負担額は高額療養費制度の利用で一般的に11万円くらい(70歳未満・年収約370〜770万円の場合)であるケースが多数です。※入院時の食費負担や差額ベッド代等は含みません。
自己負担額は年収(所得)によって異なりますので、ご加入の医療保険(医療保険者)にご確認・お問い合わせください。詳しくは、手術費用についてをご覧ください。
アブレーション治療中の様子

アブレーション以外の治療法
薬物療法
抗不整脈薬や心拍数を調整する薬を使用し、不整脈の発作を抑えたり、症状を軽減したりする治療です。心房細動の場合には、脳梗塞予防のために抗凝固薬を使用することもあります。薬物療法は体への負担が比較的少ない一方で、薬の効果が十分でない場合や、副作用が問題となる場合もあります。
外科的治療
不整脈の種類や心臓の状態によっては、外科的な治療が選択肢となることもあります。特に心臓弁膜症などで心臓外科手術が必要な場合には、不整脈に対する外科的治療を同時に行うことがあります。
当院では、循環器内科と心臓血管外科が連携し、患者さんの状態に応じた治療方針を検討しています。
アブレーション治療のリスク・合併症について
カテーテルアブレーションは低侵襲な治療ですが、すべての医療行為と同じように、一定のリスクがあります。主な合併症として、以下のようなものがあります。
- カテーテルを挿入した部位からの出血や血腫
- 血管損傷
- 心タンポナーデ
- 脳梗塞や一過性脳虚血発作
- 心膜炎
- 横隔神経麻痺
- 食道関連合併症
- 肺静脈狭窄
- 徐脈によるペースメーカー治療の必要性
- 不整脈の再発
合併症の頻度や内容は、不整脈の種類、治療部位、患者さんの状態によって異なります。当院では、治療前にリスクを丁寧にご説明し、安全に配慮しながら治療を行っています。
よくある質問
Q. アブレーションを受ければ、不整脈は完全に治りますか?
A. 不整脈の種類や患者さんの状態によって治療効果は異なります。アブレーションによって発作が大きく減る方や、薬を減らせる方もいます。一方で、再発する場合や、複数回の治療が必要となる場合もあります。治療前に、予想される効果と限界についてご説明します。
Q. 治療中に痛みはありますか?
A. 治療は局所麻酔、鎮静、または全身麻酔で行います。痛みや不安をできるだけ軽減できるよう配慮しています。治療内容や麻酔方法は、不整脈の種類や患者さんの状態に応じて決定します。
Q. 入院期間はどのくらいですか?
A. 標準的には2泊3日の入院となることが多いですが、病状や治療内容によっては、1泊2日や日帰りで対応できる場合もあります。安全性を確認したうえで、患者さんに合った入院期間をご提案します。
Q. 仕事にはいつから復帰できますか?
A. デスクワークであれば、退院後数日以内に復帰できることもあります。ただし、重いものを持つ作業や激しい運動は、出血予防のため一定期間控えていただく場合があります。復帰時期は治療内容や体調によって異なりますので、主治医にご確認ください。
Q. 治療後も薬は必要ですか?
A. 治療後もしばらく薬を継続することがあります。特に心房細動では、脳梗塞予防のための抗凝固薬が必要となる場合があります。薬をいつまで続けるかは、不整脈の再発状況、年齢、基礎疾患、脳梗塞リスクなどを考慮して判断します。
Q. 高齢でもアブレーションは受けられますか?
A. 年齢だけで治療の可否が決まるわけではありません。全身状態、心機能、持病、内服薬、生活の質への影響などを総合的に判断します。ご高齢の方でも、症状や病状によってはアブレーションが選択肢となる場合があります。
芝山納恵瑠医師からのメッセージ
不整脈は、動悸や息切れなどの症状だけでなく、生活の質や将来的な健康にも関わることがあります。一方で、不整脈の種類や重症度は患者さんによって大きく異なるため、すべての方に同じ治療が必要なわけではありません。当院では、循環器内科と心臓血管外科が連携し、患者さんお一人おひとりの状態に合わせた治療方針をご提案しています。
お仕事やご家庭の事情で長期の入院が難しい方にも、可能な範囲で日程や入院期間を調整し、安心して治療を受けていただけるよう努めています。
不整脈と診断された方、動悸や脈の乱れが気になる方、薬以外の治療について相談したい方は、どうぞお気軽にご相談ください。医師、看護師、臨床工学技士、放射線技師などのチームで、安全で質の高い医療を提供できるよう取り組んでいます。
各種施設指定・認定
- 日本不整脈心電学会不整脈専門医研修施設
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